DTCP+とは(1)
- 録画番組をインターネットを介して外出先で再生・視聴 -

「DTCP+」はデジタルコンテンツの著作権保護方式DTCP-IPの新バージョンであり、 DTCPやDTCP-IPのライセンス団体であるDTLA(Digital Transmission Licensing Administrator)が2012年1月に策定した「DTCP-IP 1.4」 の通称です。
従来のDTCP-IPでは、デジタル放送をストリーミング再生したり、 ダビング(ムーブ/コピー)できるのはホームネットワーク(家庭内LAN)内に限られていましたが、以下の図のように、 DTCP+では家庭内で録画したデジタル放送番組をインターネットや公衆回線を介して外出先などの外部からでもストリーミング再生できるようにリモートアクセスなどの新しい機能が追加されており、 2013年からDTCP+対応の製品が発売されるようになりました。

DTCP+を利用して録画番組をインターネットを介して再生・視聴

DTCP+を利用して録画番組をインターネットを介して再生・視聴

DTCP+に対応した初めての製品としては2013年2月にIO DATA社からNAS(LAN接続HDD)製品 「HVL-Aシリーズ」が発売されるようになり、 上の図のように、NASにダビングした録画番組をホームネットワークを越えて外出先などの外部からでもパソコンでリモート再生できるようになりました。 再生用のDTCP+対応ソフトウェアとしては「DiXiM Digital TV 2013 for IO-DATA」が無償でダウンロードできるようになっています。

その後、IO DATAからは録画番組をトランスコード(圧縮変換)するためのアダプターやトランスコーダー内蔵のNAS新製品「HVL-ATシリーズ」が発売され、 パナソニックからはBDレコーダーDIGA用のDTCP+対応アダプター、BuffaloからはDTCP+対応NASなどが発売されるようになりました。
また、外部から再生できるのはパソコンだけでなくスマートフォンでも出来るようになっています。

以下では、DTCP+の内容や使われ方を理解するために、
 ・DTCP+の概要
 ・DTCP+に対応した機器
 ・ロケーションフリーとの比較
について紹介します。

<DTCP+関連ページ>
DTCP+に対応した製品の詳細については、
 「DTCP+とは(2) -対応製品と使い方-
のページにまとめてあります。


<最新情報>
DTCP+対応のタブレット(2013年11月)
auからDTCP+対応のタブレットが発売されるようになりました。
 au「ARROWS Tab」

DTCP+対応のスマートフォン新製品(2013年10月)
ドコモとauからDTCP+対応の冬モデルが発売されました。
 ドコモ「ARROWS NX F-01F」
 au「ARROWS Z」

IO DATAのHVL-AT、HVL-Aがファームウェアをアップデート(2013年10月9日)
ファームウェアがVer.1.22にアップデートされ、nasne、DIGA、シャープブルーレイ等からの自動ダビング機能が強化されました。

iPhone、iPad、iPod touch用のDTCP+対応アプリ(2013年8月)
iOSに対応するDTCP-IP対応アプリ「DiXiM Digital TV for iOS」が8月30日にVer.2.0.0にバージョンアップされ、 DTCP+にも対応するようになりました。

DTCP+対応のスマートフォンが新発売(2013年6月)
2013年夏モデルの中で次の3機種がDTCP+に対応しており、Androidスマートフォンで録画番組を外出先から視聴できるようになりました。
 ドコモ「ARROWS NX F-06E」
 ドコモ「Disney Mobile F-07E」
 ソフトバンク「ARROWS A 202F」






DTCP+の概要

DTCP+は、従来のDTCP-IPと比べると拡張仕様となっており、特に外部からのリモートアクセスの仕様とルールを定義しています。
DTCP-IPに比べて次のような新しい機能が追加されています。

  • アナログ映像出力の禁止
  • DRMコンテンツのMPEG2-TS以外のコンテナ伝送をサポート
  • マルチコピーカウントという新しいコンテンツ管理情報(CMI)を導入
  • リモートアクセス機能

この4つ目のリモートアクセス機能が外部からのアクセスを可能にしており、 ホームネットワーク内のルータを越えたアクセスが出来なかった従来の仕様と大きく変わっています。

但し、ホームネットワークを越えて外部からリモートアクセスする場合は各種の制限があり、 現状では次のような制限に従った製品仕様となっています。

  • 同一のLAN内で機器どうしのレジストレーション(ペアリング)が事前に必要。
  • リモートアクセスできるのは同時に1台だけが許される。
  • 再生できる放送番組は録画されたものであり、リアルタイムの放送は不可。

また、リモート接続する場合、暗号化方式は従来と同じAES128bitと決められていますが、 ホームネットワークにおけるDLNAのような機器どうしの接続方式はまだ決められていません。
従って、DTCP+対応製品が発売されるようになっても、接続方式についてはメーカー独自のものを採用することになり、 メーカーが異なると接続ができないようなケースが発生する可能性があります。 言い換えると、いずれかのメーカーやグループがデファクトを作って先行することも可能です。

DTCP+対応製品への取り組み
DTCP+が策定された後は、2012年5月に開催された「第15回組込みシステム開発技術展」などでDTCP+への対応について展示されており、 ユビキタス社がDTCP+対応のSDK(システム開発キット)を提供するとの発表などがありましたが、具体的な製品の発表・発売はありませんでした。
しかし、2013年2月にIO DATA社のNAS製品「HVL-Aシリーズ」が、 DiXiMなどのDLNA対応ソフトウェアを開発してきたデジオン社と組んで業界のデファクトを目指して先行発売されるようになりました。
ホームネットワーク内のルータを越えた外部からのアクセスは「NATトラバーサル技術」が採用されており、 接続するための方式としては、デジオン社の「DiXiM リモートアクセスサービス」を採用しています。 このサービスは2月から運用開始されています。
HVL-Aにダビングされた録画番組をホームネットワークの外部から視聴できるのは、 当初は、デジオン社から提供されている再生用ソフトウェアをインストールしたパソコンだけでしたが、 スマートフォンやタブレット向けのDTCP+対応アプリが提供されるようになり、これらを用いた再生・視聴も可能になりました。




DTCP+に対応した機器

DTCP+に対応する製品には、録画番組をインターネット上に送出する機器と、これを受信して再生する機器があります。
特に、DTCP+ではデジタル放送チューナーを搭載している機器からは直接に送出できない決まりになっているため、 デジタルTVやBDレコーダー、nasneなどで録画した放送番組はDTCP+対応のNAS(LAN接続HDD) にDTCP-IPムーブで一度ダビングしておき、そのNASから送出するか、あるいはDTCP+対応アダプターを介して送出ことになります。

送出機器
DTCP+対応NAS(LAN接続HDD)
 IO DATAの「HVL-ATシリーズ」(トランスコード機能搭載)
 IO DATAの「HVL-Aシリーズ」(トランスコーダー機能を持つアダプターは別売)
 Buffaloの「LS410シリーズ」(トランスコード機能搭載)
DTCP+対応アダプター
パナソニックのDTCP+対応アダプター「DY-RS10」を用いるとDIGAの一部機種で録画した番組を送出できます。

受信機器
パソコン
DTCP+対応のソフトウェアを用いて再生を行います。 上記のDTCP+対応NASを購入すると再生用のDTCP+対応ソフト「DiXiM Digital TV 2013 for IO-DATA/Buffalo」が無償で利用できます。
また、富士通のパソコン「ESPRIMO FH78/LD」は録画機能とDTCP+サーバー機能を備えており、 DTCP+によるリモートアクセスも行うことができます。
スマートフォン
Android OSのスマートフォンとしては次の富士通製の2013年夏モデル3機種にDTCP+対応のアプリがプリインストールされるようになり、 スマートフォンでも録画番組を外部からストリーミング再生できるようになりました。
 ドコモ「ARROWS NX F-06E」
 ドコモ「Disney Mobile F-07E」
 ソフトバンク「ARROWS A 202F」
また、iPhone、iPad、iPod touchなどのiOS対応機器に対しては、DTCP-IP対応アプリ「DiXiM Digital TV for iOS」 が2013年8月にVer.2.0.0にバージョンアップされてDTCP+対応となったのでこれをインストールすれば利用できます。
タブレット
 au「ARROWS Tab」

DTCP+に対応した製品の詳細については、
 「DTCP+とは(2) -対応製品と使い方-
のページにまとめてありますので、こちらをご覧ください。





ロケーションフリー機器との比較

デジタル放送の録画番組や放送中の番組をインターネットを介して再生・視聴できる製品としては、 ロケーションフリー(ロケフリ)機器があります。 これはルータのUPnP機能などを利用して外部からリモートアクセスするものであり、DTCP+のような著作権保護の考え方は入っていません。
また、アナログ出力をデジタル化して送出するので画質的には劣化することになります。

製品例としては、
 ・Slingbox(米国Sling Media社)
 ・VULKANO FLOW(米国Monsoon Multimedia社)
 ・WiTV(韓国COSTEL社)
 ・エリアフリーTV(株式会社ピクセラ)
などがあります。 これらの製品は国内では、HD映像も視聴できるSlingbox PRO-HDがイーフロンティア社から、 VULKANO FLOW(ボルカノフロー)はIO DATA社から、WiTVはCOSTEL JAPAN社から発売されています。 また、エリアフリーTVはシフトバンクBBから発売されています。
なお、ソニーからもロケーションフリー製品が発売されていましたが、現在では生産終了となっています。
<製品情報>
Slingbox PRO-HD
VULKANO FLOW
WiTV
iPhone・iPad用デジタルTVチューナーエリアフリーTV SB-TV04-WRIP

Slingbox PRO-HDについて
Slingbox PRO-HDはコンポーネント入力端子(D端子)とコンポジット入力端子(ビデオ/S端子)を備えており、 BD・DVD・HDDレコーダーやデジタル放送チューナーなどの出力をこれに接続します。 1080iまでのハイビジョン映像をストリーミング配信することが可能であり、 自宅のレコーダーやチューナーに接続しておけば、インターネット経由で外出先や海外でも録画番組やデジタル放送を視聴できます。 但し、映像はH.264やWMVで圧縮して送出されるようになっています。
また、通信回線の速度にあわせて映像の圧縮比率を動的に変更する「Sling Stream」技術を搭載しており、 ハイビジョン視聴(H.264)でも3Mbps以上の帯域幅があれば利用できるようになっています。
再生用の端末として利用できるのは、パソコン(Windows、Mac)、iPhone、Android端末などであり、 パソコンでは一般的なWebブラウザ(Internet EXplorer、Firefox、Safariなど)で接続、再生することができます。
接続するには、SlingboxのWebサイト上でIDとパスワードを取得する必要があり、視聴ページを開くと再生できるようになります。

WiTVについて
WiTV(ワイティービー)の詳細については下記のページで紹介しています。
 「ロケーションフリー装置WiTVの使い方


<DTCP+関連ページ>
DTCP+に対応した製品の詳細については、
 「DTCP+とは(2) -対応製品と使い方-
のページにまとめてあります。