超高速無線LAN「IEEE802.11ac」(Wi-Fi5)
の使い方

ホームネットワーク(家庭内LAN)やオフィスのLANで使用されている無線LANには「IEEE(米国電気電子学会)」 が制定した次のような6つの規格がありますが、 IEEE802.11acは無線周波数の5GHz帯を使用して、理論的には最大で6.93Gbpsの伝送速度を実現できる特徴があります。
 IEEE802.11b(理論最大速度 11Mbps、実効通信速度 数Mbps以下)
 IEEE802.11g(理論最大速度 54Mbps、実効通信速度 約20Mbps)
 IEEE802.11a(理論最大速度 54Mbps、実効通信速度 約20Mbps)
 IEEE802.11n(理論最大速度 600Mbps、実効通信速度 約150Mbps)
 IEEE802.11ac(理論最大速度 6.93Gbps)
 IEEE802.11ax(理論最大速度 9.6Gbps)

このIEEE802.11acは2013年3月の電波法関連規則の改正により日本国内でも高速無線LAN規格「IEEE802.11ac(Draft)」として使用できるようになり、 この規格を採用した無線LANルータ(親機)や子機がまず発売されるようになりました。 その後2014年2月には正式な規格として国内でも承認され、無線LANルータや子機だけでなく、 パソコン、スマートフォン/タブレットやデジタル家電などでも対応製品が増え始めました。

最近は、無線LANの名称は下記のように業界団体の「Wi-Fiアライアンス」が制定したものが製品などでも広く使われるようになっています。
 IEEE802.11nはWi-Fi4、
 IEEE802.11acはWi-Fi5、
 IEEE802.11axはWi-Fi6

従来の高速無線LAN「IEEE802.11n」でもデジタル放送などを伝送するのに十分な実効通信速度を確保できますが、 複数の放送番組を同時に通信するような使い方や大容量のデータを短時間で伝送するにはIEEE802.11acの高速性が効果的になります。

以下では、IEEE802.11acの高速化原理や特徴について解説し、更に、主要な対応製品を紹介していきます。

  • 超高速無線LAN「IEEE802.11ac」の特徴
  • IEEE802.11ac対応の無線LANルータ(親機)
  • IEEE802.11ac対応の無線LAN子機
  • IEEE802.11ac対応の無線LANイーサネットコンバータ

IEEE802.11ax(Wi-Fi6)については下記のページで紹介していますのでご覧ください。
超高速無線LAN「Wi-Fi6・Wi-Fi6E」(11ax)の使い方

<注意点>
無線LANはWi-Fi(ワイファイ)とも呼ばれるようになっていますが、Wi-Fiは業界団体の「Wi-Fiアライアンス」が制定したものであり、 上記した無線LANの規格を採用し、更に、無線機器どうしの自動接続方式(WPS)を定めて無線LANが簡単に利用できるようにしています。
従って、Wi-Fi対応製品であれば高速な無線LAN通信が行えて、メーカーが異なる機器でも接続設定が簡単に行えると考えて差し支えありません。
Wi-Fiアライアンスの無線LANの名称とIEEE(米国電気電子学会)の名称の関係は次のようになります。
 Wi-Fi4:IEEE802.11n(使用周波数は2.4GHz帯と5GHz帯)
 Wi-Fi5:IEEE802.11ac(使用周波数は5GHz帯)
 Wi-Fi6:IEEE802.11ax(使用周波数は2.4GHz帯と5GHz帯)


なお、無線LANや有線LANを使用したホームネットワークの構築については、 「ホームネットワークの構築」のページをご覧ください。

ホームネットワーク(家庭内LAN)構築の関連ページ

ホームネットワークの高速化、拡張、セキュリティ向上などの方法について
 ⇒「ホームネットワークの改良
ホームネットワークを構成するLAN製品の具体例について
 ⇒「ホームネットワークの構成機器
ホームネットワークの構成実例(Aさんの自宅システム)を詳細に紹介
 ⇒「デジタルホームの構築例
ホームネットワークへの機器の接続状況、実効通信速度、通信プロトコルなどを調べる方法
 ⇒「LAN解析ツール


ホームネットワーク(家庭内LAN)にマルチメディア機器やデジタル家電機器を接続してマルチメディアコンテンツ を活用するホームネットワークシステム(デジタルホーム)の具体的な作り方や使い方については、 「デジタルホームの作り方」、 「デジタルホームの使い方」のページをご覧ください。





超高速無線LAN「IEEE802.11ac」(Wi-Fi5)の特徴

無線LANを用いてホームネットワークを構成する場合のシステム構成例を図1に示しておきました。 無線LANを構成する中心機器である無線LANルータ(親機)と各種ホーム機器の間は無線LAN規格に準じたワイヤレス通信が行われます。

図1 無線LANの構成機器とシステム構成例

無線LANの構成機器とシステム構成例

「IEEE802.11ac」(Wi-Fi5)は従来の高速無線LAN規格IEEE802.11nの高速化拡張技術を応用しており、 5GHz帯の周波数を使用して理論的にはIEEE802.11nの約11倍となる6.93Gbpsもの超高速通信が可能になります。
このような高速性を実現するために、IEEE802.11acでは次のような技術を利用しています。

  1. 利用帯域の拡大(11nの利用帯域40MHzを最大で160MHzまで拡大)
  2. 変調方式の向上(11nの6ビット方式(64QAM)を8ビット方式(256QAM)に拡大)
  3. 複数アンテナを用いる同時伝送方式「MIMO」を拡大(11nの送受信4本を2倍に)
  4. マルチユーザMIMO方式を追加(1台ずつの通信を最大4台で同時通信可能)

次に、IEEE802.11ac対応製品を使用する際の特徴について記載しておきます。

IEEE802.11acの実効通信速度
無線電波を使用する通信では、実効的な通信速度は周囲の電波環境に依存するため、理論速度に比べると大きく低下します。
例えば、壁による信号の減衰や、同じ周波数を使用する他の機器からのノイズなどの影響があります。
また、ルータの設置場所やアンテナの向きを変えるだけで実効速度が変化することがあります。

IEEE802.11n等の従来方式と変わらない事項
無線LANルータ(親機)と子機が通信できるようにする自動接続方式は従来と変わらずに次のような3種の方式があるので、 親機と子機が同じ方式に対応していれば簡単に接続設定が行えます。
 WPS(Wi-Fi対応製品)
 AOSS/AOSS2(バファロー製品が採用)
 らくらく無線スタート(NEC製品が採用)
また、親機と子機が通信するためには、親機の親機の識別コード(SSID)とパスワード、暗号化方式(WPA2/WPA/WEP)を子機に入力して設定しますが、 これも従来と変わりません。

高出力化の工夫
親機と子機の距離が離れていても安定して通信できるように、ハイパワー出力の製品があります。 一戸建ての住居で1階と2階で通信するような場合はハイパワー製品を選ぶと良いです。 また、距離が離れすぎて信号強度が減衰するようであれば、中継器を介在して通信する手段もあります。
次に、親機に付いているアンテナは特定の方向に電波を強く送出できるようになっています。 特に、複数のアンテナを備えている場合はビームフォーミングなどの手段により強く電波が出る指向性があるので、 アンテナの向きを調整することが大事です。

他規格との混在
無線LANルータ(親機)がIEEE802.11acに対応している場合は、無線LAN子機の規格がIEEE802.11acと同じ周波数帯を利用しているIEEE802.11b/g/n(2.4GHz) やIEEE802.11a/n(5GHz)であれば通信することができます。但し、最大通信速度は遅い規格の速度に合わせることになってしまいます。

IEEE802.11ac通信とIEEE802.11n通信の同時使用
IEEE802.11acでは5GHzの周波数帯を使用し、IEEE802.11nでは2.4GHzの周波数帯を使用できるので、IEEE802.11ac通信とIEEE802.11n通信を同時に行うことが可能です。 但し、無線アンテナの使用状況により、それぞれの最大通信速度は変わってきます。
無線LANルータ(親機)では、5GHzのIEEE802.11ac通信の最大速度と、2.4GHzのIEEE802.11n通信の最大速度を併記して仕様として表示していることがあります。 例えば、1300Gbps(5GHz)と450Mbps(2.4GHz)が併記されて、最大で1750Mbpsと表現されることがあるので注意してください。

無線LANルータ(親機)を選ぶ時のチェックポイント
通信規格や通信速度などの他に、次の点にも注意しておく必要があります。
有線LANの通信速度とポート数
IEEE802.11acに対応している無線LANルータは有線LANの接続ポートを3~4個程度備えており、1000M/100M/10Mイーサネットに対応しています。
USB端子にHDDやメモリを接続してサーバ化できるか
USB端子を備えているルータは、その端子に外付けHDDやUSBメモリを接続するとNAS(LAN接続HDD)のように使える製品があります。
リモートアクセスに対応しているか
ルータのUSB端子に外付けHDDを接続しておき、このHDDに外出先などの外部からアクセス(リモートアクセス)できる製品があります。




IEEE802.11ac対応の無線LANルータ(親機)

無線LANルータは無線通信(ワイヤレス)でホームネットワークを構成するための中心機器であり、無線LAN親機とも呼ばれます。
図1のように、無線LAN子機とは5GHzあるいは2.4GHzの無線電波を使ってワイヤレス通信しますが、インターネットに接続するためのWANポートと、 有線LAN(イーサネット)の接続ポートも備えています。 IEEE802.11ac対応の無線LANルータでは、有線LANのポートはギガビット(1Gbps)まで対応するものが4ポート程度備えられています。
以下に、主なIEEE802.11ac対応無線LANルータの製品例を掲載しました。


メーカー、製品名・型番 商品情報 概 要
BUFFALO
WSR-2533DHPLS
無線ルータ(BUFFALO)


価格、口コミ

WSR-
2533DHPLS

WiFi5対応(11ac)、11a/b/g/n
通信速度:
1733(5GHz) + 800Mbps(2.4GHz)
無線LAN簡単設定「AOSS」対応
無線設定「WPS」対応
1Gbps有線ポート:3ポート
推奨接続端末:18台
BUFFALO
WSR-1166DHP4
無線ルータ(BUFFALO)


価格、口コミ

WSR-
1166DHP4

WiFi5対応(11ac)、11a/b/g/n
通信速度:
866(5GHz) + 300Mbps(2.4GHz)
無線LAN簡単設定「AOSS」対応
無線設定「WPS」対応
1Gbps有線ポート:4ポート
推奨接続端末:12台
BUFFALO
WSR-1166DHPL
無線ルータ(BUFFALO)


価格、口コミ

WSR-
1166DHPL/N

WiFi5対応(11ac)、11a/b/g/n
通信速度:
866(5GHz) + 300Mbps(2.4GHz)
無線LAN簡単設定「AOSS」対応
無線設定「WPS」対応
1Gbps有線ポート:3ポート
推奨接続端末:12台
BUFFALO
WCR-1166DS
無線ルータ(BUFFALO)


価格、口コミ

WCR-
1166DS

WiFi5対応(11ac)、11a/b/g/n
通信速度:
866(5GHz) + 300Mbps(2.4GHz)
無線LAN簡単設定「AOSS」対応
無線設定「WPS」対応
100Mbps有線ポート:1ポート
推奨接続端末:6台
IO DATA
WN-DX2033GR
無線ルータ(IO DATA)


価格、口コミ

WN-
DX2033GR/E

WiFi5対応(11ac)、11a/b/g/n
通信速度:
1733(5GHz) + 300Mbps(2.4GHz)
無線設定「WPS」(Wi-Fi)対応
QRコネクトに対応
ギガビット対応HUB:4ポート
推奨接続端末:24台
IO DATA
WN-DX1167GR
無線ルータ(IO DATA)


価格、口コミ

WN-
DX1167GR/E

WiFi5対応(11ac)、11a/b/g/n
通信速度:
867(5GHz) + 300Mbps(2.4GHz)
メッシュWi-Fiに対応
無線設定「WPS」(Wi-Fi)対応
QRコネクトに対応
ギガビット対応HUB:4ポート
推奨接続端末:16台
NEC
Aterm WG2600HP3
無線ルータ(NEC)


価格、口コミ

WG2600HP3

WiFi5対応(11ac)、11a/b/g/n
通信速度:
1733(5GHz) + 800Mbps(2.4GHz)
無線設定「らくらく無線スタート」
無線設定「WPS」(Wi-Fi)対応
「らくらくQRスタート」対応
ギガビット対応HUB:4ポート
NEC
Aterm WG1900HP2
無線ルータ(NEC)


価格、口コミ

WG1900HP2

WiFi5対応(11ac)、11a/b/g/n
通信速度:
1300(5GHz) + 600Mbps(2.4GHz)
無線設定「らくらく無線スタート」
無線設定「WPS」(Wi-Fi)対応
「らくらくQRスタート」対応
ギガビット対応HUB:4ポート



IEEE802.11ac対応の無線LAN子機

無線LAN子機は親機と通信するための通信デバイスであり、ほとんどのノートPCやスマートフォン/タブレット等は内蔵されており、 デジタルTVやBDレコーダなどのデジタル家電でも子機機能を内蔵する製品が増えています。
無線LAN子機機能を備えていない機器については、USBで接続できる無線LAN子機が発売されています。 このようなIEEE802.11ac対応の主な製品例を以下に掲載しました。


メーカー、製品名・型番 商品情報 概 要
BUFFALO
WI-U3-866DS
無線LAN子機(BUFFALO)


価格、口コミ

WI-U3-866DS

WiFi5対応
11ac/a/b/g/n対応
通信速度:866Mbps(5GHz)/300Mbps(2.4GHz)
USB3.0対応
簡易接続設定「AOSS」
Wi-Fi接続設定「WPS」
BUFFALO
WI-U2-433DMS/N
無線LAN子機(Buffalo)


価格、口コミ

WI-U2-433DMS/N

WiFi5対応
11ac/a/b/g/n対応
通信速度:433Mbps(5GHz)/150Mbps(2.4GHz)
USB接続、小型
簡易接続設定「AOSS」
Wi-Fi接続設定「WPS」
IO DATA
WN-AC867U
無線LAN子機(IO DATA)


価格、口コミ

WN-AC867U

WiFi5対応
11ac/a/b/g/n対応
通信速度:867Mbps(5GHz)/300Mbps(2.4GHz)
USB接続
Wi-Fi接続設定「WPS」
IO DATA
WN-AC433UK
無線LAN子機(IO DATA)


価格、口コミ

WN-AC433UK

WiFi5対応
11ac/a/b/g/n対応
通信速度:433Mbps(5GHz)/150Mbps(2.4GHz)
USB接続
Wi-Fi接続設定「WPS」
NEC
Aterm WL900U
無線LAN子機(NEC)


価格、口コミ

PA-WL900U

WiFi5対応
11ac/a/b/g/n対応
通信速度:867Mbps(5GHz)/300Mbps(2.4GHz)
USB接続
接続設定「らくらく無線」
Wi-Fi接続設定「WPS」



IEEE802.11ac対応の無線LANイーサネットコンバータ

パソコンがIEEE802.11acに対応していない場合はUSB接続タイプの無線LAN子機を使用すればよいのですが、 デジタルTVやBDレコーダ、NAS(LAN接続HDD)などのように有線LANの端子しか無い場合は、 IEEE802.11ac対応の無線LANイーサネットコンバータを介在して無線化することができます。 (図1を参照)
このようなIEEE802.11ac対応のコンバータ製品でギガビットの有線LANポートを備えている製品例を以下に掲載しました。 ほとんどは中継器として使用できる製品であり、内蔵する有線LAN(イーサネット)ポートを利用して無線から有線にコンバートしています。
以下のNEC製品のように、無線LANルータをもう一台用意して子機として働くように設定することによりコンバートとして利用しているケースもあります。


メーカー、製品名・型番 商品情報 概 要
BUFFALO
WEX-1166DHP2
無線LANイーサネットコンバータ(BUFFALO)


価格、口コミ

WEX-
1166DHP2

WiFi5対応
IEEE802.11ac対応、11a/b/g/n対応
無線LAN速度:866Mbps(5Ghz)
無線LAN速度:300Mbps(2.4GHz)
有線LAN(ギガビット対応):1ポート
簡単設定WPS対応
コンセント直挿し
WiFi中継器として利用可能
BUFFALO
WEX-1166DHPS
無線LANイーサネットコンバータ(BUFFALO)


価格、口コミ

WEX-
1166DHPS

WiFi5対応
IEEE802.11ac対応、11a/b/g/n対応
無線LAN速度:866Mbps(5Ghz)
無線LAN速度:300Mbps(2.4GHz)
有線LAN(ギガビット対応):1ポート
簡単設定WPS対応
コンセント直挿し
コンパクトタイプ
WiFi中継器として利用可能
BUFFALO
WEX-733DHPS
無線LANイーサネットコンバータ(Buffalo)


価格、口コミ

WEX-
733DHPS/N

WiFi5対応
IEEE802.11ac対応、11a/b/g/n対応
無線LAN速度:433Mbps(5Ghz)
無線LAN速度:300Mbps(2.4GHz)
有線LAN(ギガビット対応):1ポート
簡単設定WPS対応
コンセント直挿し
WiFi中継器として利用可能