無線LANルーター(無線ルータ)とは
-使い方と製品例-
無線LANルーター(無線ルータ)は無線LAN方式によるホームネットワークを構成する中心装置であり、
無線LAN親機とも呼ばれています。
また、Wi-Fiアライアンス(Wi-Fiとはのページを参照))の無線通信方式に対応していることからWiFiルーターとも呼ばれています。
無線LANルーターの役割は、以下の図1に示した無線LANの構成例のように、
無線LAN子機機能を備えた端末機器(子機)との間を電波を用いて通信することにより、
無線LAN子機をインターネットに接続したり、子機どうしで通信を行えるようにします。
有線LANの場合はLANケーブルを用いて機器間を配線する必要がありますが、無線LANではこの手間を省くことができ、
家庭内のどこででも端末機器を利用できるようになるので、デジタルTVやBDレコーダーなどのデジタル家電も無線LAN子機の機能を持つ製品が増えています。
特に、スマートフォンやタブレットなどのモバイル機器やノートパソコン、
小型のゲーム機等は標準で無線LANに対応(無線LAN子機機能を内蔵)していますので、
これらをホームネットワークで利用するには無線LANルーターが重要なネットワーク機器となります。
また、図1の構成例のように、有線LANのLANポートしか持っていない機器の場合は、
無線LANイーサネットコンバータを利用すれば無線LANルーターと通信できるようになります。
図1 無線LANの構成例と無線ルータ/子機/コンバータの使われ方
次に、無線LANルーター製品はどのような無線LAN規格(IEEE802.11)に対応しているかによって次のような6タイプに分けられます。
① IEEE802.11b/g対応機器
② IEEE802.11a/b/g対応機器
③ IEEE802.11b/g/n対応機器
④ IEEE802.11a/b/g/n対応機器
⑤ IEEE802.11ac/a/b/g/n対応機器
⑥ IEEE802.11ax/ac/a/b/g/n対応機器
無線LANの通信速度(規格の最大値)は11aと11gが54Mbps、11bが11Mbpsとなっていますが、
11nでは300Mbpsと高速になり、更に11acでは6.9Gbpsと超高速となっています。
また、2020年になると11ax(最大速度9.6Gbps)に対応する製品が発表されるようになりました。
また、全世界におけるWi-Fiの普及と進化を促進している団体であるWi-Fi Alliance(ワイファイ アライアンス)では、
IEEE802.11nをWi-Fi4(4代目の規格)
IEEE802.11acをWi-Fi5(5代目の規格)
IEEE802.11axをWi-Fi6(6代目の規格)
と呼ぶようになったので、最大速度が11nである上記の④はWi-Fi4対応製品と表現されるようになりました。
また最大速度が11acである⑤はWi-Fi5対応製品、最大速度が11axである⑥はWi-Fi6対応製品と表現されています。
2020年になると、IEEE802.11axにも対応した製品(WiFi6ルーター)も多く発売されるようになり、
メーカーカタログでは、WiFi6ルーターとWiFi5ルーターが主流となり、WiFi4ルーターは少なくなっています。
更に、2022年になると、従来の2.4GHz帯と5GHz帯に加えて、
60GHz帯の電波も利用できるWiFi6EのWiFiルーターも登場するようになっています。
無線LANルーター製品を選ぶ際に注意すべき点としては、
- 無線LANの規格
- 通信速度
- 使用周波数
- 出力パワー
- 初期設定方式
- 端末機器(子機)との接続設定方式
- 端末機器(子機)との接続台数
- 付加機能(簡易NAS、デバイスサーバー、リモートアクセス、他)
などがありますので、その詳細を以下で紹介していきます。
なお、紹介項目は、
- 無線LANルーターの特徴と使い方
- 無線LANルーターの設定、子機との接続
- 無線LANルーターの製品例
に分けて記載することにします。
有線LANルーターを用いたホームネットワークに無線LANルーターを接続して無線LAN機器も通信できるようにする場合は、 無線LANルーターのルーター機能をOFFにして有線LANルーターのルーター機能だけを利用するようにします。
この時、無線LANルーターは無線LAN機器(子機)を電波でつなぐためのアクセスポイント(親機)として機能することになります。
無線LANルーターの特徴と使い方
無線LANルーターは無線LANを構成するための中心装置であり、無線LAN親機とも呼ばれています。
有線LANルーターと同様にルータ機能やIPアドレスを割り振るDHCP機能を備えており、
無線LAN対応機器(子機)を外部のインターネット回線に接続したり、機器間でお互いに通信できるようにします。
但し、インターネットプロバイダから提供されているインターネット接続用のモデム(あるいは、ブロードバンドルータ)がルータ機能を持っている場合や、
有線LANルーターに接続して有線LANルーターのルータ機能を使用する場合は、
無線LANルーターのルータ機能をオフにして、無線LAN子機をつなげるためのアクセスポイントとして使用します。
また、無線LANルーターには有線LANの接続端子(LANポート)を備えている製品が増えており、 無線LANルーターの高速化に伴い、ギガビット(1000Mbps)対応のLANポートを4つ程度備えている場合が多いです。 これにNAS(LAN接続HDD)やデジタル家電機器などを接続すれば高速な通信が行えます。
無線LANの規格
無線LANの規格には、
- IEEE802.11b(理論通信速度:11Mbps、周波数:2.4GHz帯)
- IEEE802.11g(理論通信速度:54Mbps、周波数:2.4GHz帯)
- IEEE802.11a(理論通信速度:54Mbps、周波数:5GHz帯)
- IEEE802.11n(理論通信速度:150/300/450/600Mbps、周波数:2.4GHz帯/5Ghz帯)
- IEEE802.11ac(最大通信速度6.9Gbps、周波数:5GHz帯)
- IEEE802.11ax(最大通信速度9.6Gbps、周波数:2.4GHz帯/5GHz帯)
がありますが、これらの複数に対応している無線LANルーター製品が発売されており、組み合わせ例としては、
・IEEE802.11b/g/n
・IEEE802.11a/g/n
・IEEE8.2.11a/b/g/n
・IEEE8.2.11ac/a/b/g/n
・IEEE8.2.11ax/ac/a/b/g/n
に対応している製品が多いです。
また、2019年後半になると、IEEE802.11axにも対応する製品も発売されるようになっています。
これらの規格の中で11n、11ac、11axは、「Wi-Fi Alliance」という業界団体によってそれぞれWi-Fi4(第4世代)、Wi-Fi5(第5世代)、
Wi-Fi6(第6世代)という名称が付けられて、一般的に広く呼ばれるようになっています。
通信速度
無線LANを利用する場合は、高速な通信ができること、端末機器が離れた場所にあっても安定した通信ができること等が要求されます。
そのために、高速無線LANのIEEE802.11nとIEEE802.11acに対応している製品が主流になっています。
IEEE802.11nでは符号化方式の工夫などにより、当初の150Mbpsを超える300Mbps、450Mbps、600Mbpsの理論通信速度が得られるようになっています。
また、IEEE802.11acでは最大通信速度が6.9Gbps、IEEE802.11axでは最大通信速度が9.6Gbpsと大幅に早くなっています。
但し、これらの値は規格上の最大値であり、実際の通信速度(実効通信速度)はこれらの値よりも小さくなってしまいます。
使用周波数
無線LANで利用できる無線周波数は、2.4GHz帯と5GHz帯と決められています。
当初は2.4GHz帯(11b/g)を使用していましたが、電子レンジなど各種の家庭電気製品が同じ周波数帯を利用しているため、
ノイズ等の不安定要素がありましたので、新たに5GHz帯(11a)も使用できるようになりました。
その後、両者の周波数を同時に使用できる規格(11n、11ac)に対応する無線LANルーターが発売されるようになりました。
また、最近では2.4GHz帯と5GHz帯を同時に利用できるデュアルバンドの製品が増えてきています。
通信速度の表し方は、例えば「450Mbps(11a/n)+300Mbps(11b/g/n)」のようになっており、
450Mbpsの通信と300Mbpsの通信を同時に行うことができます。
出力パワー
家庭の間取りや部屋の広さ、機器の設置場所などにより、電波の強度は大きく減少することがあります。
そこで出力パワーを増やして安定な通信ができるハイパワータイプの製品が増えています。
設置場所が離れていたり、途中に壁などの電波の障害になるものがある場合はハイパワータイプの無線LANルーターを使用したほうが良いです。
付加機能
無線LANルーター製品には様々な機能が付加されており、各製品の特徴となっています。
便利な付加機能の例としては、
・簡易NAS
・リモートアクセス
・ファイアウォール機能
などがあります。
簡易NASとは、USB端子に接続したUSB-HDDやUSBメモリなどに保存されている動画・画像・音楽などを端末機器が共有利用できる機能です。
NAS(LAN接続HDD)ではなくて低価格なUSB-HDDなどをNASのように利用できるようになります。
リモートアクセスはインターネットを介して外部から自宅のホームネットワークに接続できる機能です。
リモートデスクトップによる自宅パソコンの遠隔操作やファイルデータのダウンロード/アップロードなどが行えるようになります。
リモートアクセスに対応している無線LANルーターはPPTPサーバー機能(VPN)を備えています。
ファイアウォール機能はインターネット回線からの不正アクセスを検出・防止する働きです。
ホームネットワーク(家庭内LAN)のセキュリティを向上することができます。
無線LANルーターの設定、子機との接続
無線LANルーターは他の機器との接続を行うために各種の設定が必要になります。
特に、無線LAN子機と通信できるようにする接続設定が大事な要素であり、簡単に行えるような工夫がなされています。
無線LANの場合は電波を用いて通信するため、通信信号が別の家庭の部屋にも届いてしまうことがあるので、
無線LANルーター製品を他の同様な製品と区別できるように製品固有の識別情報として、
・SSID(固有の識別ID)
・暗号キー
を持っています。これらは製品の背面に記載されており、SSIDは2.4GHz帯用と5GHz帯用の2種類があり、
暗号キーは両者とも共通となっています。
【無線LANルーターをインターネット回線に接続】
インターネットプロバイダからモデムを提供されている場合は、これと無線LANルーターのWAN端子の間をLANケーブルでつなぎます。
通常は、インターネット回線への接続は自動で行われますが、
パソコンを用いて設定用のブラウザを立ち上げると詳細な設定が行えるようになっています。
フレッツ回線などのようにPPPoEの設定が必要になる場合は、このブラウザを用いて行います。
【無線LAN子機との接続設定】
無線LANルーターと無線LAN子機の間は無線電波を利用して通信を行うので、
関係のない機器が接続できないように無線LANルーターは固有の識別ID(SSID)を持っており、これを無線LAN子機に認識させる必要があります。
また、暗号化通信を行うようになっており、暗号化方式(WEP、WPA、WPA2など)を選んで暗号キーを用いるようにしています。
これらの設定を手動で行う場合は、無線LAN子機にSSIDと暗号キーを登録する設定が必要になります。
しかし、この手間を省いて設定が簡単に行えるように接続設定方式が工夫されており、
「WPS」、「AOSS」、「らくらく無線」などの方式があります。
WPSはWi-FIで採用されている接続設定方式であり、AOSSはBuffalo社が、らくらく無線はNECが中心になって策定された方式です。
通常の無線LAN機器は、「WPSだけ」、「AOSSとWPS」、「らくらく無線とWPS」のいずれかに対応していますので、
無線LANルーター(親機)と無線LAN端末(子機)が同じ接続方式の製品であれば、
親機と子機についている接続設定のためのボタンを押すだけで簡単に設定が行えるようになっています。
なお、パソコンやスマートフォン・タブレットなどの場合は専用のソフトをインストールして、ソフト上でボタンを押すようになっています。
無線LANルーターの製品例
家庭用の無線LANルーター製品は、Buffalo、IO DATA、NEC、エレコム、NETGEAR、
PLANEX等の周辺機器メーカーや通信機器メーカーから発売されており、
ほとんどの製品は高速通信ができるIEEE802.11nとIEEE802.11acに対応しています。
また、より高速な通信が可能な新規格IEEE802.11axに対応する製品も2019年後半から発売されるようになりました。
この新規格IEEE802.11axはWiFi6とも呼ばれるようになり、IEEE802.11nはWiFi4、IEEE802.11acはWiFi5とも呼ばれています。
無線LANルーターを使用する際に通信性能に大きく影響するのは通信速度と出力パワーです。
理論通信速度が300Mbps以上の製品であればデジタル放送の伝送も安定して行うことができますので、
このタイプでハイパワーの製品を選んでおけばよいです。
また、高速性を活かせるようにギガビット対応のHUB機能(4ポート程度)も備えるようになっています。
以下の表に、主な製品例を掲載しました。
Baffaloの製品はスマートフォンだけでWi-Fiとインターネット回線の初期設定ができる「AOSS2」を搭載しています。
また、USB-HDD、USBメモリ、シリコンディスク、カードリーダー(SDカード等)を接続できるUSB端子を備えており、
これらに保存されているファイルデータをパソコンやデジタル家電などで共有利用できる簡易NASとして利用できます。
IO DATAの製品はスマートフォンを無線LANにつなぐ際にQRコードを使って簡単にWi-Fi設定が行える専用アプリ「QRコネクト」が利用できます。
また、USB-HDD、USBメモリを簡易NASとして利用できる機能を備えています。
更に、接続したUSB機器を共有利用できるデバイスサーバー機能(net.USB)も備えており、
USB-HDD、USBメモリ等をホームサーバー(メディアサーバー)として利用でき、プリンタも共有できます。
「VPNリモートアクセス」を利用して、外出先から自宅のネットワークへ接続して、NASに保存された動画・音楽やファイルにアクセスしたり、
Windows PCのリモートデスクトップ機能で自宅のパソコンを操作することもできます。
NECの製品も簡易NAS機能やリモートアクセス機能を備えています。 また、スマートフォンとの接続設定が簡単に行える「AtermらくらくQRスタート」が利用できます。
無線LANルーターの主な製品例