デジタル放送(地デジ、BS、CS)のネットワーク化
テレビのデジタル放送は衛星を利用したBS放送やCS放送が先行して始まり、
続いて地上波を利用した地上デジタル放送(地デジ)がアナログ放送と並行して始まりましたが、
2011年7月24日には地上波を用いたアナログ放送は終了し、デジタル放送(地デジ)に完全に切り替わります。
アナログからデジタルに移行する主な理由としては、デジタル放送は映像・音声情報を圧縮して送信できるため、
使用する周波数領域がアナログの3分の2程度で済み、
完全デジタル化で空く帯域を携帯電話や災害情報の通信等に割り当てることができる事などが挙げられています。
また、デジタル放送のメリットとしては、電波が弱くても信号が受信できれば鮮明な画像や音声を視聴できることや、
走査線の数がアナログ放送の倍以上あり高画質のハイビジョンを楽しむことができる、
番組情報やニュースや天気予報などの情報をデータ放送として送れる、等々があります。
このように、デジタル放送には多くのメリットがありますが、一方、映像・音声をデジタルデータとして送るため、 番組の著作権保護などを考慮して次のような各種の制約があり、 デジタル放送コンテンツを扱う際に影響することになります。
- デジタル放送に対応したB-CASカード搭載のデジタルチューナーが必要になる。
BS・CS・地デジの3波共用は赤いB-CASカード、地デジ専用は青いB-CASカード - 受信した番組には録画出来るものと出来ないものがある。
- レコーダのHDDに録画した番組を他のHDD、メモリカードやBD、DVDに残す場合は
コピー回数に制限がある。 - 地デジ番組等をディスクに残す場合は、専用のディスクを使用する必要がある。
- ホームネットワークを介して録画・ダビングや再生を行うには、機器やソフトが
著作権保護技術DTCP-IPに対応している必要がある。
以下では、上記したような制約のあるデジタル放送番組をホームネットワーク(家庭内LAN)
上で取り扱う方法や注意点等について紹介します。
主な内容:
- デジタル放送の制約
- デジタルTVの差異(購入時、使用時の留意点)
- デジタル放送機器を使用する際の注意点
- DLNA・DTCP-IP対応のデジタル放送機器・ソフト
- デジタル放送チューナーのネットワーク化
デジタル放送の録画機器と再生機器の例(ホームネットワークを介して利用)
デジタル放送の制約
デジタル放送の録画、ダビング
アナログ放送では録画やダビング(コピー)は自由にできますが、
デジタル放送の場合は、コンテンツの著作権保護のためコピーガードが行われており、 通常は何回でもコピーすることはできません。
この録画、ダビングについての仕組みは「ダビング10」と呼ばれており、NHKと無料民放で運用されています。
また、このダビング10の制約はホームネットワークを介した録画、ダビングにも適用されます。
「ダビング10」では、BD・DVD・HDDレコーダやパソコンのHDDに録画したコンテンツは 9回まで他の媒体
(HDD、DVDディスク、ブルーレイディスクなど)にコピーすることが可能であり、10回目はムーブすることが許されています。
このムーブが行われるとHDDに録画されていた元のコンテンツは消去されてしまいます。
また、BD・DVD・HDDレコーダやDVDディスク、
ブルーレイディスクにコピーやムーブされたコンテンツを更にコピーやムーブすることはできません。
なお、有料放送は一度だけコピーできる「コピーワンス」、 アナログ出力は回数制限のない「コピーフリー」となっています。
ネットワークで伝送
ホームネットワーク(家庭内LAN)を介して録画や再生を行うためにデジタル放送コンテンツを伝送する場合は、
ネットワーク伝送のための著作権保護方式であるDTCP-IPに対応した機器やソフトウェアを使用しなければなりません。
ホームネットワークでコンテンツを共有するための相互接続方式DLNA(Ver.1.5)
にはDTCP-IPが採用されていますので、結局、DLNAとDTCP-IPに対応している機器やソフトウェアを使用することになります。
HDDへの録画
デジタル放送番組をHDDやDVD等に録画する場合は、録画モードを選ぶ必要があります。
録画モードには、DR、XP、SP、LP、EPなどがありますがメーカーによっては別の呼び方や他のモードがあります。
この中でDRモードはHDD専用の録画モードであり、ハイビジョンや標準画質(SD)
の放送画質を劣化無くそのままの状態で録画できます。なお、DRモードはダイレクトモードやTSモードとも呼ばれています。
その他のモードは、番組を圧縮して長時間録画ができるようにしていますので、DRモードに比べると画質は劣化することになります。
HDDに録画されたデジタル放送コンテンツをホームネットワークを介して再生できるのは、メーカーにも依存しますが、
通常は、DRモード(TSモード)のコンテンツである場合が多いです。
また、AVCHD(H.264)で録画した場合は、メーカーによっては再生できる機器に制限があります。
例えば、ソニー等の機種にはAVCHDの再生も可能な機種があります。
ディスクへの書き込み
HDDに録画したデジタル放送コンテンツをDVDに書き込むには記録メディア向けの著作権保護技術の一つであるCPRM
(Content Protection for Recordable Media)に対応したディスクを使用します。
また、このディスクを再生するには、CPRM対応のプレーヤーやパソコンを使用することになります。
パソコンのモニタ
パソコンとモニタの間をケーブルで接続する場合は、デジタル信号を送受信する経路を暗号化して、
デジタル放送コンテンツが不正にコピーされないようにしています。
ケーブルのインターフェースがDVIやHDMIなどのデジタルインターフェースの場合は、
HDCP(High-bandwidth Digital Content Protection system)が採用されており、これに対応したモニタ、
ディスプレイを使用しなければいけません。
デジタル放送コンテンツを扱う場合の制約事項(著作権保護、録画モード、他)
デジタルTVの差異(購入時、使用時の留意点)
ホームネットワーク(家庭内LAN)を介してデジタル放送コンテンツを再生できるDLNA・
DTCP-IP対応のデジタルTVには各メーカー毎に特徴があります。
ホームネットワーク化の視点で観た場合の特徴を以下に記載しました。
(2010年春季までの製品について)
サーバ機能があるデジタルTVは、日立のWOOOシリーズ
HDDをテレビ内に内蔵してデジタル放送番組を直接録画できるデジタルTVは日立、東芝、パナソニック等から発売されていますが、
録画した番組をホームネットワーク上に配信できるサーバ機能(DLNAのDMS機能)を備えているのは日立のWOOOシリーズです。
製品例は、「デジタル家電」のページをご覧ください。
REGZAはNASにDTCP-IPダビング
REGZAの内蔵HDDや外付けHDDに録画したデジタル放送番組は自身でしか再生できません。
その番組をホームネットワーク上に配信できるようにするには、ホームネットワークに接続したDLNA・
DTCP-IP対応のNAS(LAN対応HDD)にいったんダビングしておく必要があります。
DLNA・DTCP-IP対応のクライアント機器でその番組を視聴するにはダビング録画したNASにアクセスすることになります。
詳細については、「REGZAの使い方」のページをご覧ください。
デジタルTV内蔵のHDDは交換できるか
日立WOOOのiVDRは簡単に交換できることが特徴であり、他の機器でも内部の録画コンテンツを再生できます。
東芝REGZAの内蔵HDDは交換できますが、録画操作を行ったREGZA固有のローカルな暗号化が施されているため、
他のREGZAでは録画コンテンツを再生できません。
BRAVIAにも録画機能を持つ製品が発売されるようになりました
ソニーBRAVIAにはHDDに録画する機能がありませんでしたが、2009年以降は録画できる機種が発売されるようになりました。
当初は、HDDへの録画は同社のBD・HDDレコーダ製品を使ってもらうコンセプトだったのかも知れません。
BRAVIAについては、「BRAVIAの使い方」のページをご覧ください。
VIERAにはHDD内蔵タイプがあるが、再生できるのは自身でだけ
パナソニックのVIERA製品の中にはHDDを内蔵しているものがありますが、録画した番組を再生できるのは自身でだけです。
また、REGZAのようなNASにダビングする機能はありません。
デジタル放送機器を使用する際の注意点
デジタル放送番組の保存はNASに
デジタル放送の録画番組は容量が非常に大きいので、大容量のNAS(LAN対応HDD)にまとめて保存しておき、
NASを映像配信用のホームサーバとして利用すると便利です。
NASはDLNAとDTCP-IPに対応している製品を使用します。
主な製品例:IO DATA
『
HVL1-G500
』、『
HVL1-G1.0T
』、『
HVL1-G1.5T
』
ダビングにはどの程度の時間がかかるか
REGZAの場合は、内蔵HDDや外付けHDDに録画したデジタル放送番組をホームネットワークを介して再生・視聴するには、
NASにいったんダビングしておき、ダビングしたコンテンツにアクセスする必要があります。
例えば、30分の録画番組(容量3.6GB)を外付けHDDからNASにダビングする場合は約11分かかります。使用した機器は、
- デジタルTV:REGZA Z8000
- 外付けHDD:Buffalo USB-HDD 容量500GB
- NAS:IO DATA 『HVL1-G1.0T』 容量1TB
- ホームネットワーク:ギガビットイーサネット 1000BASE-T(IEEE802.3ab)
ホームネットワーク上の伝送速度はどの程度か
NASに保存したデジタル放送番組をホームネットワークを介してパソコンで再生・
視聴した場合の平均伝送速度の例を以下に記載しました。
・地デジ番組:15~20Mbps
・BS番組:20~25Mbps
・WOWWOW番組:20~25Mbps
使用した機器は、
- NAS:IO DATA 『HVL1-G1.0T』 容量1TB
- パソコン:OS Vista Ultimate、CPU:Core2Duo 3.2GHz、RAM:4GB
- 再生ソフトウェア:SoftDMA 1.58
- ホームネットワーク:ギガビットイーサネット 1000BASE-T(IEEE802.3ab)
無線LANでも大丈夫か
デジタル放送番組をネットワークを介して再生する場合は、上記しましたように平均伝送速度は約15~25Mbpsとなりますが、
伝送データをメモリに蓄えるために伝送当初の速度は約50Mbps程度になることがあります。
従って、スムーズに再生するには50Mbps程度の伝送能力が必要となります。
無線LANのIEEE802.11g、IEEE802.11aでは理論速度は54Mbpsですが実効速度は半分程度になり、
使用環境によっては更に下がってしまいます。
しかし、高速な無線LANのIEEE802.11nでは使用環境にもよりますが実効速度が最大で100Mbps近くありますので、
これを用いるのが望ましいです。
DLNA・DTCP-IP対応のデジタル放送機器
デジタル放送コンテンツをホームネットワーク上で利用するには、
機器やソフトウェアがDLNAとDTCP-IPに対応している必要があります。
具体的な機器・製品については、
マルチメディア機器(NAS、ネットワークメディアプレーヤー、他)
デジタル家電(デジタルTV、BD・DVD・HDDレコーダ、他)
PC用デジタル放送チューナーによる録画(PC用デジタル放送チューナー)
パソコンの使い方(再生用ソフトウェア)
のページにまとめてありますので参照してください。
デジタル放送チューナーのネットワーク化
PC用デジタル放送チューナーはパソコンにUSBケーブルで接続するかパソコンに内蔵して使用しますが、
デジタル放送用の同軸端子がパソコンの近くに無い場合は同軸ケーブルを敷設するのが大変です。
そのような場合は、以下の図のようにUSBデバイスサーバ
を用いるとホームネットワークを介してPC用デジタル放送チューナーをパソコンに接続することができます。
例えば、デジタル放送用の同軸端子がある部屋にLANケーブルが敷設されていれば、
LANケーブルでUSBデバイスサーバを接続し、そのUSBデバイスサーバにPC用デジタル放送チューナーをUSBケーブルで接続します。
パソコンからみると、USBデバイスサーバを用いることにより、
PC用デジタル放送チューナーをLANケーブルで延長した形となります。
PC用デジタル放送チューナーが1台であっても、これを複数のパソコンで利用することもできます。
また、ホームネットワークを無線LANで構成しておけば、家のどこでもデジタル放送を視聴できるようになります。
なお、無線LANは高速なIEEE802.11nが適しています。
PC用デジタル放送チューナーをホームネットワークで接続