技術紹介・解説

ホームネットワーク(家庭内LAN)を活用した デジタルホーム構築に関連する主要技術について紹介・解説します。

なお、動画、静止画、音楽などのマルチメディアコンテンツを活用できるデジタルホームの詳細については、
 ・デジタルホームへ向けて
 ・デジタルホームの作り方
 ・デジタルホームの使い方
 ・デジタルホームの構築例
デジタルホーム構築に関連する機器・製品については、
 ・マルチメディア機器
 ・デジタル家電
 ・ネットワークオーディオ
 ・ネットワークカメラ
 ・新コンセプト機器
デジタルホーム構築のベースとなるホームネットワーク(家庭内LAN)については、
 ・ホームネットワーク(LAN)
 ・ホームネットワークの改良
 ・ホームネットワーク機器
 ・高速PLCの使い方
等の各ページ(左記メニュー)をご覧ください。







DLNA(Digital Living Network Allience)

DLNAはAV家電機器や、パソコン・周辺機器、モバイル機器などのメーカーにより結成された業界団体です。 各社の製品が互いに互換性を持って、ネットワーク上で容易に相互接続できるためのガイドライン (業界標準)を作成しています。 ガイドラインでは、機器間で通信するための手順(UPnPなどのプロトコル)、 ユーザインターフェース、コンテンツのフォーマット(MPEG2、JPEG、等々)などを定めており、 このガイドラインに従っている機器間はメーカーや機種が異なっていても簡単にお互いを認識することができます。
ガイドラインは2004年6月にVer.1.0(DLNA1.0)が発表され、2006年3月にはモバイル機器 (デジタルカメラやPDA)やプリンタも対象とし、更にDTCP-IPにも対応したVer.1.5(DLNA1.5)が発表されました。 また、2009年にはVer.2.0(DLNA2.0)が予定されています。 製品としては、DLNA1.0か、あるいはDLNA1.5に対応しているものが混在していますが、 DLNA1.5対応の製品が増えています。
DLNAから機器認証を受け、 DLNAガイドラインに沿った機器は、DLNAロゴを使用できます。
DLNAがサポートするコンテンツフォーマットは、

  • 動画 :MPEG2、MPEG1、MPEG4、WMV9
  • 静止画:JPEG、PNG、GIF、TIFF
  • 音楽 :LPCM、MP3、WMA9、AC3、AAC、ATRA3plus

機器間相互接続の方式としてDLNAを採用している機器は年々増えており、 次のように多種にわたっています。(サーバは、コンテンツを保存して提供する機器。 クライアントは、サーバにアクセスしてコンテンツを再生する機器)

  • パソコン (サーバ又はクライアント)
  • ネットワークメディアプレーヤ (クライアント)
  • デジタルテレビ (クライアント)
  • DVD・HDDレコーダ (サーバ)
  • LAN-HDD(NAS) (サーバ)
  • ネットワークオーディオ機器 (サーバ又はクライアント)
  • デジタルカメラ (サーバ)
  • プリンタ (サーバ)
  • ゲーム機 (クライアント)
  • PDA (クライアント)

これらの機器をホームネットワーク(家庭内LAN)に接続すると、互いに他の機器を自動認識して、 更に、共有コンテンツ(動画・静止画・音楽)も自動認識されます。 従って、クライアント機器のコンテンツ選択画面から例えば動画を選ぶと、 ホームネットワークに接続された全てのサーバ機器の動画コンテンツを一覧表示することができ、 希望のコンテンツを再生できます。これは他の機器間接続方式MCX、WMCには無いDLNAの大きな特長です。
(参考)DLNAホームページ

DLNAに対応している機器やソフトウェアの具体例は、 特集DLNAとは: 概要とDLNA対応機器・DLNA対応ソフト」のページまとめて掲載してありますのでご覧ください。
また、DLNAの各バージョンの特徴、違いなどの詳細については、 「DLNAのバージョン」のページをご覧ください。

DLNAの基本モデル構造(概略)

DLNAの基本モデル構造(概略)


DTCP-IP
(Digital Transmission Content Protection over Internet Protocol)

DTCP-IPは、コンテンツの著作権を保護するための方式(技術)の1つです。 ビデオカメラなどのAV機器とパソコン間の接続には、IEEE1394という接続方式が用いられ、 DTCP-1394という保護技術が採用されていますが、 このDTCPの考え方を更にIPネットワークに対して採用したものです。
DTCP-IPでは、コンテンツを暗号化してIPネットワーク上に送信し、更に、 ホームネットワーク(家庭内LAN)から外部のインターネット上に出ないような工夫をして、 コンテンツの著作権を保護しています。 DLNAガイドラインVer.1.5(DLNA1.5)では、このDTCP-IPを著作権保護技術として採用しています。
電波産業会(通称ARIB)が2005年9月に、 DTCP-IPを用いてデジタル放送をネットワーク上に配信することを認可したので、 地上デジタル放送やBSデジタル放送の動画コンテンツをホームネットワーク上でも利用できる製品が発売されるようになりました。
DLNAとDTCP-IPに対応したパソコン、BD・DVD・HDDレコーダ、デジタルTV等で録画したデジタル放送(地デジ、 BS、CS)の番組は、家庭内LANを介して接続された離れた部屋のDLNA・ DTCP-IP対応のネットワークメディアプレーヤやデジタルTVで再生することができます。

DTCP-IPの詳細は、「DTCP-IPとは」のページで解説していますので参照してください。

DTCP-IPに対応している製品の具体例は、 「マルチメディア機器」、 「デジタル家電」 のページをご覧ください。


MCX(Media Center Extender)

MCXは、マイクロソフト社のOSであるWindows Media Center Edition (MCE)が動作するパソコンをサーバとして、このサーバパソコンにリモートデスクトッププロトコル (RDP)という接続手順で機器を接続するための機能です。 コンテンツファイルはMCEでデコードされてから、 MCX機能を持つクライアント機器にストリームとして配信されるため、 MCEが扱えるフォーマットは全て再生することができます。 MCEは当初はマイクロソフト社のOSであるXPに付加されていましたが、その後、 Windows Media Centerとして、VistaやWindows 7のHome Premium、Ultimateに組み込まれました。
MCX機能が搭載されている機器としては、マイクロソフト社のXbox360があります。 Xbox360を用いるとWindows Media Center搭載パソコンに蓄積されているマルチメディアコンテンツをネットワークを介して視聴することができます。 更に、パソコンにTVチューナーが搭載されていれば、TV放送をネットワークを介して視聴することもできます。
また、RDPを用いるとサーバパソコンの画面をそのままMCX機器に伝送することができますので、 パソコンの画面を離れた部屋のテレビに表示して、パソコンを操作できる便利な特徴があります。
MCX対応のネットワークメディアプレーヤとしては、米国のLinksys、 HP、D-Link、NiveusMediaなどのメーカーの製品が主に米国で発売されています。

Xbox360の使い方については、 「ゲーム機の使い方」、及び、 「Xbox360の使い方」 のページをご覧ください。


WMC(Windows Media Connect)

WMCは、パソコンをホームサーバにして、コンテンツファイルを共有するための マイクロソフト社のソフトウェアです。ネットワークメディアプレーヤやパソコン などのようなクライアントに対して、どのような手順でコンテンツファイルを配信するのか、 どのようなファイルフォーマットを扱うのかを規定しています。
WMCはHTTPとUPnPという通信プロトコルを使用しており、 これらのプロトコルを実装しているクライアント機器にコンテンツを配信できます。
WMCは単独のソフトウェアとしては提供されなくなりましたが、 Windows Media Player 11(WMP11)に組み込まれていますので、 WMP11をパソコンにインストールすれば自動的にインストールされ、 著作権保護されたコンテンツ(Windows Media DRM 10対応)の再生・サポートも可能です。
WMCがサポートするフォーマットは、

  • 動画 :MPEG2、MPEG1、AVI、WMV、ASF
  • 静止画:JPEG、PNG、BMP、GIF、TIFF
  • 音楽 :MP3、PCM、WMA、WAV

なお、WMCはDLNAとは異なり、クライアントが対応するフォーマットに 応じてデータを変換するトランスコード機能がないため、サーバのコンテンツを 再生できるかどうかはクライアントの仕様に依存します。逆に、ネットワーク メディアプレーヤなどのクライアント機器が様々なフォーマットに対応していれば 効果は大きくなります。

Windows Media Player 11を用いてマルチメディアコンテンツを視聴する方法については、 「パソコンの使い方(マルチメディアコンテンツの視聴)」 のページをご覧ください。


DRM(Digital Rights Management)

デジタルデータの著作権を保護する技術です。 デジタル化された動画や音楽などのデジタルコンテンツは、複製や遠距離送受信を行っても 、品質が劣化しないため、インターネットの普及やパソコンの高速化・大容量化に伴い、 著作者の許諾を得ない違法な配布・交換が増えています。 そこで著作権を保護するため、これらコンテンツの流通・再生に制限を加えるのがDRM技術です。
Windows Media DRM 10は最も標準的なDRMで、多くの動画配信サイトで利用されています。 Windows Media DRM 10の保護のかかったコンテンツをパソコンでダウンロードした場合、 Windows Media DRM 10に対応したネットワークメディアプレーヤを使用すれば、 ホームネットワークを介して、TVの大きな画面でコンテンツを視聴することが出来ます。


UPnP AV(Universal Plug and Play Audio Visual)

UPnPはホームネットワーク(家庭内LAN)などのIPネットワークにおいて、特別な管理用のサーバ機器を用いずに、 接続機器同士が互いに認識して機能の把握などを行うことができる基本的な相互接続性(コネクティビティ) を定めた規格です。UPnP AVは更にアプリケーションに関する取り決めまで定めたものです。 ビデオやオーディオなどのコンテンツファイルのサーバや、 ビデオやオーディオをサーバから取得して再生するメディアレンダラー、 及び、それらを制御するコントロールポイントを定義しており、コントロールポイントが中心となって、 メディアサーバとメディアレンダラーの仲介を行うことにより、 ネットワーク上でコンテンツファイルを容易に共有できるようになります。 また、コンテンツファイルのディレクトリアクセスや検索、ファイルの作成・削除、 ファイルの再生・停止・録画(録音)・一時停止など、 各種制御命令を双方向でやり取りする手順なども決められています。

コンテンツファイルをネットワークを介して視聴するには、UPnP AVによる操作方法の共通化に加え、 使用するネットワーク(LAN)やコンテンツの伝送方法、 コンテンツのファイル形式(フォーマット)なども共通化する必要があります。 そこで、これらを含めた総合的なガイドラインを作成したのがDLNAであり、 UPnP AVはDLNAガイドラインの中心的な役割を果たしています。


高速PLC(Power Line Communication)

家庭の電力線(100Vの電気配線)を使用して信号を伝送するPLCは、 周波数450KHz以下の電気信号を用いて、家電製品の制御用やセキュリティ用途に 利用されていましたが、動画などの高速信号を送るのは困難でした。
高速PLCは 情報信号を高速に伝送するために、周波数2MHzから30MHzまでの広い周波数帯の電気信号を用いており、 欧米では利用されていましたが、日本では2006年10月に正式認可され、 製品が発売されるようになりました。
高速PLCは、有線LANのイーサネットの信号を電力線にのせて伝送するもの であり、イーサネットケーブルを新たに配線することなく、既に配線されている電力線を 用いて信号を送ることができるメリットがあります。
イーサネット信号を電力線にのせるための変換装置である高速PLCアダプタが各社から発売されていますが、 高速PLCの方式には次の3種類があります。

  • HomePlug AV
    米国Interon社のPLCチップを用いた製品が主流
  • HD-PLC
    松下電器のPLCチップを用いた製品が主流
  • UPA
    スペインDS2社のPLCチップを用いた製品が主流

信号速度(物理速度)は、HomePlug AVとUPAが200Mbps、 HD-PLCが190Mbps(新製品は210Mbps)とされていますが、実効速度はその3分の1程度といわれています。 実際の家庭で実効速度を測定した結果が各種雑誌等の記事で紹介されており、 一般的なTCP/IP通信では約30~50Mbps程度です。 実効速度は、100Vコンセントに接続されている電気製品からの電気ノイズ等の影響や、 家庭の配線状態などによっても低下することがあります。⇒FAQを参照

また、3種の方式には互換性が無いため、混在して使用すると互いにノイズ源となり実効速度が低下します。 マンションやアパートのような集合住宅では、 他の家が異なる方式のアダプタを使用している場合などは注意が必要です。
新たに配線する必要が無いことや、無線LANに比べて設定が簡単なことなどの特徴がありますので、 今後の普及が期待されています。

高速PLCの具体的な使い方や関連製品については、 「高速PLCの使い方」 のページをご覧ください。