ホームネットワークの解析ツール(2)
- 実効通信速度を調べる -
ホームネットワーク(家庭内LAN)は機器間をLANケーブルで接続して通信を行う有線LANや、
機器間の通信を無線電波で行う無線LANにより構成されますが、
これらはどのような通信規格を使用しているかによって、通信速度は次のように最大通信速度が決められています。
有線LAN(イーサネット)
- 10GBase-T:10Gbps
- 5GBase-T:5Gbps
- 2.5GBase-T:2.5Gbps
- 1000Base-T:1000Mbps
- 100Base-TX:100Mbps
- 10Base-T:10Mbps
無線LAN
- IEEE802.11ax(Wi-Fi6):9.6Gbps
(理論速度。変調・符号化方式の改良で更に大きな値も実現) - IEEE802.11ac(Wi-Fi5):6.9Gbps
(理論速度。変調・符号化方式の改良で更に大きな値も実現) - IEEE802.11n(Wi-Fi4):600Mbps
(理論速度。変調・符号化方式の改良で更に大きな値も実現) - IEEE802.11g:54Mbps(理論速度)
- IEEE802.11b:11Mbps(理論速度)
- IEEE802.11a:54Mbps(理論速度)
これらの通信速度は規格上の数値であって、
実際に通信を行なっている機器の実効的な通信速度はLAN環境やデータ信号の内容などによって変わってきます。
例えば、無線LANの場合は無線電波を利用して通信を行うので途中に障害物があったり、
機器間の距離が大きくなると実効的な通信速度が低下してしまいます。
また、同じ周波数・チャンネルを使用している機器の数が多い場合も速度低下の原因になります。
また、有線LANの場合は通信信号がLANケーブルを伝わるので通信速度は上限に近い値となりますが、
データ信号をバッファリングするメモリのサイズが小さいような場合は実効的な通信速度が低下することがあります。
従って、ホームネットワーク(家庭内LAN)としての実効通信速度や機器間の実際の通信速度を知っておくと、
ホームネットワークの構成や機器の設置方法・使い方などを改善したり、速度が上がらないなどのトラブルが発生した際に原因を探すのに役立ちます。
例えば、デジタル放送の録画番組をホームネットワークを介して再生する時にスムーズに再生できないなどのトラブルが無線LANを利用する際に起きることがあります。
以下では、実効的な通信速度を調べる方法として、
- TCP、UDP通信の実効速度を測定する方法
- FTP通信の実効速度を測定する方法
- パソコン間や、NAS(LAN接続HDD)とパソコンの間のファイル伝送速度を測定する方法
- Windowsタスクマネージャで通信速度を調べる(デジタル放送番組の通信速度など)
- 実効通信速度をリアルタイムで表示するツール
- インターネット回線の実効速度を測定
などについて紹介します。
ホームネットワークにおけるTCP/UDP通信の実効速度
ホームネットワーク(家庭内LAN)では、TCPやUDPという通信手順(プロトコル)で通信信号のやり取りを行なっています。
このTCP通信やUDP通信の通信速度を知れば、通信経路としての実効的な速度を把握することができます。
具体的な測定方法を以下に紹介します。
「Iperf」の利用
ホームネットワーク(家庭内LAN)内のTCP/UDP通信の実効速度を測定できるフリーソフトとしては、
例えば、Iperf
があります。各種OS用のIperfが提供されており、Windows版もあります。
このIperfを2台のパソコンにインストールして用いると、標準的なTCP通信の通信帯域やUDP通信の通信帯域、
遅延、ジッター量、パケットロスなどを測定することができ、通信路の実効的な通信性能を知ることができます。
Iperfでは、2台のパソコンのメモリ間でデータ転送を行うので、ハードディスク(HDD)の性能がボトルネック
になることがなく、ネットワークとしての実効的なスループットを測定できます。
Iperfの詳細な使い方は、以下のサイトを参照してください。
・
iperf(ダウンロード)
・
Iperf User Docs(英語のマニュアル)
「転送速度計測」でファイルの平均転送速度を測る
2台のパソコン間や、パソコンとNAS(LAN接続HDD)間でファイルを転送する際の平均転送速度を測ることができるフリーソフトとしては、
転送速度計測があります。
機器間でファイルをコピーする時にかかる時間を測定して平均転送速度を求めます。
計測結果は、パソコンのCPU性能やHDDのアクセス速度などに依存しますが、大体の目安を簡単に知ることができます。
転送元ファイルとして、ホームネットワークに接続されているパソコンやNAS内のファイルを選び、転送先フォルダとして
「転送速度計測」を使用しているパソコンの共有フォルダを選ぶと、
ホームネットワークを介してファイルを転送(コピー)する際の速度を求めることができます。
<測定事例>
以下に、100MbpsのスイッチングHUBに接続されている3台のパソコンを使用して、
114.58MBの動画ファイルをコピーした場合の結果を掲載しました。
「参照」ボタンをクリックして転送元のファイルと転送先のフォルダを始めに選んでおき、
続いて「転送開始」ボタンをクリックすると処理結果が表示されます。
測定結果に差がありますが、これは使用したパソコンの性能の差によるものです。
また、ファイルをコピーしている時の転送速度の変化をWindowsタスクマネージャの
「ネットワーク」を用いて表示した結果も比較のために掲載しておきました。
「転送速度計測」の画面例
(左はPC1からPC3へ転送。右はPC2からPC3へ転送)
Windowsタスクマネージャのネットワーク画面例
Windowsタスクマネージャで実効通信速度を調べる
Windowsパソコンの場合、Windowsタスクマネージャの中の「ネットワーク」を利用すると、
パソコン間や、パソコンと他の機器間でデータを通信している際の通信速度の変化を表示することができます。
デジタルTVやBDレコーダーで録画した番組やNASにダビングした番組を無線LANを介してパソコンで再生・視聴する時に、
スムーズに再生できない等のトラブルが発生した場合、この方法で録画番組の通信速度を知ることができますので、
無線LANに問題があるのかどうかなどを調べることができます。
<測定事例>
DVDレコーダーで録画した地デジ番組とBS放送番組を無線LANを介してパソコンで再生・視聴した時の通信速度の例を以下に掲載しました。
再生ソフトは「PowerDVD Ultra」を使用しています。
最初にパソコンのバッファメモリにデータを蓄積し、その後は一定速度となっていますが、両者ともスムーズに再生できており、
BS放送の方が通信速度が大きいことが分かります。
なお、縦軸の50%は50Mbpsを表しています。
Windowsタスクマネージャの画面例(録画番組の通信速度の時間変化)
- 左側が地デジ番組、右側がBS放送番組 -
<測定事例>
YouTubeからダウンロードしてNASに保存してあるMP4動画(1080p、ファイルサイズ300MB)
を無線LANを介してパソコンのPowerDVD Ultraで再生した場合の通信速度の例を以下に掲載しました。
無線LANを介して通信していますが、50Mbpsに近い速度でファイルデータが伝送されていることが分かります。
Windowsタスクマネージャの画面例(MP4動画の通信速度の時間変化)
実効通信速度をリアルタイムで表示できるツール
「TCP Monitor Plus」の利用
パソコンに入出力する通信信号のトラフィック量の時間変化(平均速度)がモニタできるフリーソフトとしては、例えば、
TCP Monitor Plusがあります。
パソコンのデスクトップに簡便にグラフ表示でき、更にLANインターフェースの情報等を知ることもできます。
NASに保存されているMP4動画をパソコンで再生した時の通信速度を以下の図に掲載しました。
ガジェットの利用
Windowsパソコン向けに提供されているガジェットの中に通信速度をリアルタイムで表示できるツールがあります。
これをパソコンのデスクトップに常駐させておくと、通信速度(送信/受信)の変化を常にモニターしておくことができます。
「TCP Monitor Plus」の画面例
(MP4映像の受信速度の時間変化)
ガジェット「Network Traffic」(旧バージョン)の表示例
(NASに保存されているMP4動画をパソコンで再生)
インターネット回線の実効速度の測定
インターネット回線の実効速度は、インターネットの接続手段(光回線、CATV、モバイル回線など)や、 基地局までの距離、回線を共有しているユーザ数(マンションなどの場合)などによって変わります。
インターネットを介してコンテンツをダウンロードする場合、回線速度が遅いと時間がかかってしまいます。
また、動画配信サービスを利用する場合は、
動画コンテンツを遅延なく視聴できるかを確認するためにも回線の実効速度を知っておくことが大事です。
インターネット上には回線速度を測定してくれるサイトが多数ありますので、
それらを利用すれば簡単に知ることができます。以下に、主なサイトを紹介します。
・速度.jp
・FAST.com(Netflixサーバーを利用)
・USENスピードテスト