DTCP-IPとは
DTCP-IPはデジタルコンテンツの著作権を保護するための方式(技術)の1つであり、
デジタル放送コンテンツをホームネットワークを介して送信/受信する際に用いられます。
DTCPは「Digital Transmission Content Protection」の略称ですが、デジタル信号を暗号化して送受信することにより、
デジタルコンテンツの不正使用やコピーなどを防いでいます。
当初は、AV機器やパソコンなどを接続する「i.LINK」(IEEE1394)という接続方式にDTCP技術が用いられて、
DTCP-IEEE1394という保護方式として採用されました。
このDTCPの考え方を更にIP(Internet Protocol)通信を行うホームネットワークに対して適用したものがDTCP-IPです。
このDTCP-IPを用いてデジタル放送をホームネットワーク内で伝送することを社団法人電波産業会(通称ARIB)が2005年9月に認可したので、 地上デジタル放送やBSデジタル放送の放送コンテンツを録画・配信できるDVD・HDDレコーダーや、これを再生・試聴できるデジタルTVなどの製品が発売されるようになり、 DTCP-IPが普及するようになりました。
ホームネットワークに接続された機器間では、機器間相互接続方式のDLNAを用いて機器やコンテンツの認識・共有が行われていますが、 更に、著作権保護のためにDTCP-IPを組み合わせて利用することにより、BD・DVD・HDDレコーダー、デジタルTV、パソコン、 モバイル機器などを使用して、
- デジタルチューナーで受信した放送をストリーム配信する
- 録画番組をホームネットワークを介して再生・視聴する
- 録画番組をホームネットワークを介してダビング(ムーブ/コピー)する
ことができるようになります。
DLNAのガイドラインでは、バージョン1.5(DLNA1.5)から新たにDTCP-IPが著作権保護方式として採用されています。
以下では、DTCP-IPの内容を理解するために、
- DTCP-IPの概要(機能や通信手順)
- DTCP-IP対応機器
- DTCP-IP対応ソフトウェア
について紹介していきます。
<注目情報>DTCP+について
従来のDTCP-IPでは、著作権保護されたデジタル放送のストリーミングやムーブなどはホームネットワーク内に限られていましたが、
2012年1月に策定された最新バージョン1.4の「DTCP+」では、インターネットを介したパソコン/スマートフォン/タブレット等への配信や、
自動車内システムへの配信などにも対応するようになっており利用範囲が広がっています。
2013年2月には、DTCP+対応のNAS製品がIO DATA社から初めて発売されるようになりました。
DTCP+については、
「DTCP+とは(1) - 録画番組をインターネットを介して外出先から再生 -」
「DTCP+とは(2) - DTCP+対応製品と使い方 -」
のページで概要や製品例を紹介していますのでご覧ください。
DLNA認証を運営していたDigital Living Network Allianceは2017年1月に解散を発表しました。 非営利の事業者団体として13年間にわたり2万5,000種類、40億台のデバイスを認証してきましたが、今後のDLNA認定やテストなどの機能は、 2017年2月1日から米国のSpireSpark Internationalが継承します。
既存のガイドラインや認証手順などは変わらず、関連製品に関しては影響がないとしています。
DTCP-IPの概要
放送や動画・音楽・画像などのコンテンツがデジタル化されると元と同じ状態の劣化のないコピーが容易に作れるため、
様々な著作権保護技術によりコンテンツが守られており不正使用を防いでいます。
例えば、デジタル放送では受信できる機器を特定するためにCAS(B-CAS)が採用されており、
ディスクに保存する際にはCPRMに対応するディスクを使用する必要があります。
また、録画した番組をダビングする場合は「ダビング10」によりコピー回数の制限が課せられています。
このような著作権保護方式の一つとして、DTCPは特にデジタルコンテンツを機器から機器へ伝送するインターフェースで使用する保護方式として検討され、
インテル、日立、パナソニック、ソニー、東芝の5社(5C)によって1998年に策定されました。
DTCPに対応している機器には、上記の5社が設立したDTLA
(Digital Transmission Licensing Administrator)という機関が発行する証明書(ライセンス)が与えられており、
これを受けていない機器はコンテンツを伝送する際に使用する暗号化鍵が得られないようになっています。
DTCPが対象とした機器間のインターフェースは、当初はAV機器等をつなぐ「i.LINK」(IEEE1394)でしたが、
IP通信を行うホームネットワークを対象として、暗号化方式や通信範囲の制限などが強化されたDTCP-IPが策定されました。
また、DTCPはBluetooth、USBなどのインターフェースや、MOST(自動車内通信)、WirelessHDなどにも拡張されて利用されています。
DTCP-IPの機能
DTCP-IPでは、放送コンテンツを配信するサーバ機器で信号を暗号化してホームネットワーク上に送信し、
これを受信するクライアント機器で暗号化信号を復号します(元に戻します)。
また、ホームネットワーク(家庭内LAN)から外部のインターネット上にコンテンツ信号が出られないような工夫をして、
コンテンツの著作権を保護しています。
DTCPではサーバ機器はソース機器と呼んでおり、クライアント機器はシンク機器と呼んでいますが、
両者は次のような通信手順で放送コンテンツを送受信します。
ソース機器とシンク機器の通信手順
<手順1>
機器間相互接続方式のDLNAによりソース機器とシンク機器がお互いに認識し合い、ソース機器内のコンテンツのリストをシンク機器に配信する。
<手順2>
コンテンツリストの中から視聴するコンテンツを選ぶと、シンク機器はソース機器に対してコンテンツの配信を要求する。
<手順3>
ソース機器とシンク機器が正規のライセンス(DTLAが発行した証明書)を持っているかの確認を行なって、暗号化鍵を共有しようとする。
<手順4>
この時に、ソース機器とシンク機器がローカルな通信経路(ホームネットワーク)で接続されているかを、次の2つの手段で確認する。
- ルータを3台以上通過する場合は認識しない。
- 信号が往復する時の遅延時間が7msを超える場合は認識しない。
<手順5>
問題なく認識できれば、ソース機器がDTCP-IPの暗号化鍵でコンテンツを暗号化してシンク機器に送信する。
<手順6>
シンク機器は受信した信号を暗号化鍵を用いて復号する(元のコンテンツに戻す)。
上記の<手順1>と<手順2>はDLNAを利用しているので、機器がDTCP-IPに対応していなくても放送コンテンツのリストはクライアント機器
(シンク機器)に表示されます。
しかし、DTCP-IPに対応していないと<手順3>以降に進めないので、クライアント機器がコンテンツの配信を要求しても、
コンテンツは配信されないので視聴できないことになります。
図1 DTCP-IPによる暗号化通信でコンテンツの著作権を保護
DTCP-IP対応機器
録画あるいはダビングしたデジタル放送番組をホームネットワークを介して送信するサーバ機器と、
この送信コンテンツを受信するクライアント機器の両者がDLNAとDTCP-IPに対応していれば、
放送番組をクライアント機器で再生・視聴することができます。
このようなサーバ機器及びクライアント機器の製品例を以下に列挙しました。
サーバ機器
- BD・DVD・HDDレコーダー
「BDレコーダーの使い方」のページを参照。 - タイムシフトレコーダー(レグザサーバ、ゼン録)
東芝:レグザサーバ DBR-M190/M180
Buffalo:ゼン録地デジチューナー DVR-Z8 - デジタル放送チューナー
各社の録画対応デジタル放送チューナー。 - パソコン用デジタル放送チューナー
「PC用デジタル放送チューナーによる録画」のページを参照。 - ケーブルテレビ(CATV)のセットトップボックス
パナソニックやパイオニアの録画対応セットトップボックス。 - スカパー!HDチューナー
録画できるスカパー!HDチューナーが対応。 - デジタルTV
東芝:REGZAのXS5/X3/Z3/ZP3シリーズ 日立:WoooのHP09/K09/V09シリーズ、S08/XP08/XP07/HP07シリーズ、
ZP05/XP05/HP05シリーズ、XP035/XP03/WP03シリーズ、
UT800/UT700シリーズ
パナソニック:VIERAのDT5/ET5/E5/VT5/GT5/RB3シリーズ
シャープ:AQUOSのX5/L5シリーズ
ソニー:BRAVIAのHX65R/HX80R/EX30Rシリーズ - パソコン(DTCP-IP対応サーバソフトを搭載)
NEC:「ホームネットワークサーバー powerd by DiXiM」を搭載したPC。
ソニー:「Giga Pocket Digital」を搭載したPC。
富士通:「DigitalTVbox」を搭載したPC。 - NAS(LAN接続HDD)
BD・DVDレコーダーやデジタルTVなどで録画したデジタル放送番組をNASにダビングしておくと、 ホームネットワークを介してDTCP-IP対応機器へ配信することができます。
「NAS(ネットワーク対応HDD、LAN接続HDD)の使い方」のページを参照。
クライアント機器
- デジタルTV
各社のデジタルTVはほとんどがDTCP-IPに対応しています。 - BDプレーヤー
パイオニア等のディスクプレーヤー。 - パソコン用BDドライブ
BDドライブへムーブできる製品が発売されています。 - ネットワークメディアプレーヤー
IO DATA:AV-LS700、AV-LS500VX/VB/V/LE
Buffalo:LT-H91LAN、LT-H90LAN、LT-H90WN - ゲーム機
PS5、PS4、PS3がDTCP-IPに対応しています。 - タブレット
「タブレット(タブレット端末)の使い方」のページを参照。 - スマートフォン
「DTCP-IP対応スマートフォン -デジタル放送番組の再生・ダビング-」を参照。 - パソコン(DTCP-IP対応プレーヤーソフトを搭載)
NEC:「ホームネットワークプレーヤー powerd by DiXiM」を搭載したPC。
ソニー:「VAIO Media plus」を搭載したPC。
富士通:「Network Player」を搭載したPC。
その他のパソコンでは、以下のDTCP-IP対応クライアントソフトをインストールすれば、サーバ機器の録画番組を再生・視聴することができます。
DTCP-IP対応ソフトウェア
パソコンにインストールして使用するサーバソフト、クライアントソフトや、 タブレット・スマートフォンなどのモバイル機器で使用するアプリなどがあります。
サーバソフト
- パソコンにプリインストールされているサーバソフトとしては、
NEC:ホームネットワークサーバー powerd by DiXiM
ソニー:Giga Pocket Digital
富士通:DigitalTVbox - パソコン用デジタル放送チューナーに添付されているサーバソフトとしては、
IO DATA:DiXiM Media Server 3 for mAgicTV
Buffalo:PcastTV4、PcastTV3など
クライアントソフト
BDレコーダーやデジタルTV、デジタル放送チューナー(PC用も含む)
等で録画されたデジタル放送をパソコンで再生・視聴できる下記のソフトがCyberLink社やDigion社から発売されています。
PowerDVD 23 Ultra(CyberLink社)
SoftDMA2(CyberLink社)
DiXiM Digital TV Plus、DiXiM Digital TV(Digion社)
「PowerDVD 23 Ultra」(2024年発売の最新版)はDLNA1.5に対応しており、
動画・音楽・画像等のサーバソフトやプレーヤーソフトとしても利用できるだけでなく、コントロール機能やレンダラー機能も備えています。
詳細については下記のページをご覧ください。
「PowerDVD 22 Ultraの使い方」
「PowerDVD 12の使い方(1)-DLNAとDTCP-IPで機器連携-」
「PowerDVD 12の使い方(2)-スマートフォンとの連携-」
モバイル機器のアプリ
自社開発のアプリやDigion社などからOEM提供されたアプリがプリインストールされています。
- タブレット
「タブレット(タブレット端末)の使い方」のページを参照。 - スマートフォン
「DTCP-IP対応スマートフォン -デジタル放送番組の再生・ダビング-」を参照。
スマートフォン・タブレット向けの単体アプリ
DTCP-IPに対応したスマートフォン・タブレット向けの無料アプリ「Twonky Beam」がパケットビデオ社から提供されています。
詳細は、「Twonky Beamの使い方」のページをご覧ください。
また、iOS向けだけに限定されたDTCP-IP対応アプリとしては、
DiXiM Digital TV for iOS(デジオン社)
Media Link Player for DTV(アルファシステムズ)
などがあります。