高速PLCの使い方
(家庭内コンセントLANの構築)
高速PLCは、ホームネットワーク(家庭内LAN)の通信信号を家庭の電力線(100V配線)を使って送る方式です。
以下の図1のように、既存の100V配線を通信にも利用するので、LANケーブル(イーサネットケーブル)を新たに配線する必要がなくなるメリットがあります。
LANケーブルの信号を電力線で送るために信号を変換する高速PLCアダプタ装置が各社から発売されており、
これを機器と100Vコンセントの間に入れるだけでよいので、無線LANのような面倒な設定は必要ありません。
規格上の最大通信速度は約200Mbpsとなっていますが、実効的な通信速度は数10Mbpsとなります。
<注意点>
100Vの電力線を使って通信信号を送る方式としては、低周波数帯(450KHz以下)を使用して低速度の信号を送る規格もありますので、
ここでは、それと区別するために、2-30MHzを用いて高速な通信ができるPLC(Power Line Communication)という意味で「高速PLC」と記述しています。
図1 高速PLCの使い方

高速PLCには次のような3種類の方式があり、
当初は各社から下記のような高速PLCアダプタ製品が発売されました。
現在ではHD-PLC方式の製品とHomePlug方式の製品が発売されています。
具体的な製品例は以下に掲載しました表をご覧ください。
HD-PLC方式
製品例
- パナソニック:BL-PA510KT、BL-PA310KT、BL-PA300KT
- IO DATA:PLC-HP240EA-S、PLC-ET/M2-S、PLC-ET/MW-S
HomePlug方式
製品例
- シャープ:HN-VA10S/40S
- ZyXEL:PLA-400
UPA方式
製品例
- BUFFALO:PL2-UPA-L1/S、PL-UPA-L1/S
- Netgear:HDX101
各方式は互換性が無いため同時に使用すると互いにノイズ源となり、実効通信速度が低下したり、通信ができなくなる場合があります。 この問題点については、電力線通信をはじめ、電話線通信や同軸ケーブル通信などの宅内ネットワークの標準規格の早期策定・普及促進を目的とした業界団体「 HomeGridフォーラム」において、 国際電気通信連合(ITU)と協力して解決策を検討していくことが2008年4月29日に発表されました。
関連情報
機器間相互接続方式のDLNAを策定しているアライアンス「Digital Living Network Alliance」では、
通信媒体(物理層)としては有線LANのイーサネット(IEEE802.3)と無線LAN(IEEE802.11)
をDLNAガイドラインに取り入れていましたが、2012年3月に高速PLCのHD-PLC(IEEE1901)も標準方式として認定しました。
なお、従来のPLCアダプター製品を使用してもDLNA対応の通信は出来ていましたので、 新たに可能になったという事ではありません。誤解のないように注意してください。
高速PLCアダプタの使い方
(1)初期設定
高速PLCアダプタは2台で1セットになっていますので、離れた場所にある100Vのコンセントに各々を接続します。
この時に、接続設定が行われますが、自動で行われる製品と、手動で行う製品があります。
セット製品は出荷時に初期設定が済んでいる場合が多いので、自動で接続できるようになります。
また、手動の場合でもアダプタの設定ボタンを同時に押すだけで簡単に設定が行えます。
(2)3台目以降の追加接続
自動設定の製品は100Vコンセントにつなげば、自動で他のアダプタを見つけて接続設定が行われるのでそのまま使用できます。
設定ボタンを押すタイプの製品は、使用している親機アダプタのそばのコンセントに追加アダプタをつなぎ、
親機アダプタと追加アダプタの設定ボタンを同時に押せば接続設定が行われます。
(3)通信を行う機器の接続
設置する場所の100Vコンセントにアダプタを挿したら、次は、使用する通信機器をLANケーブル(イーサネットケーブル)で接続します。
なお、実効通信速度を向上するために、100Vコンセントはテーブルタップでは無くて、壁に設置してあるコンセントを使用することが推奨されています。
(注)高速PLCアダプタ使用時の注意点
アダプタを使う場合、思ったほど実効通信速度が上がらないことがあります。
これは主に次の要因が考えられます。
- 他の電気製品からのノイズの影響
- 相の異なる電力線コンセントにアダプタが接続されている
詳細は、「FAQ」のページを参照してください。
高速PLCアダプタ装置
有線LAN(イーサネット)のケーブルの信号を電力線(100V配線)で送るために信号を変換するアダプタ装置です。 通常、2台で1セットの製品になっていますが3台目以降は単体で購入できます。 イーサネットのポート(接続端子)が1つの製品と複数のポートを持つ製品がありますので用途に応じて選べばよいです。
異なる方式のアダプタを混在して使用すると、実効通信速度が大きく減少したり、通信できなくなることがありますので注意が必要です。
以下の表の中でTP-Link社の製品『TL-WPA4220 KIT』は、次のようにWiFiの通信信号をPLCに変換する中継器として使用することができます。
「WiFi(IEEE802.11b/g/n)」 ⇔ 「PLC」 ⇔ 「イーサネット((100/10Mbps))」
表に掲載しましたパナソニックの製品は生産を終了しましたが、Amazon等で入手することができます。 なお、業務用途等のHD-PLC製品は現在もパナソニックから提供されています。
メーカー、製品名・型番 | 商品情報 | 概 要 |
---|---|---|
TP-Link ![]() |
|
HomePlug AV方式 壁コンセントに直接挿入できるプラグインタイプ 従来機種と比べて最大85%の電力カット ペアボタンで設定 PLCアダプター最大10台接続 範囲は室内300m イーサネット(100/10Mbps)ポート数:1 |
TP-Link ![]() |
|
HomePlug AV方式 WiFiとPLCを中継するアダプター IEEE802.11b/g/n対応 イーサネット(100/10Mbps)は2ポート搭載 壁コンセントに直接挿入できるプラグインタイプ ペアボタンで設定 |
IO DATA ![]() |
|
HD-PLC方式 壁コンセントに直接挿入できるプラグインタイプ 従来機種と比べて約38%の電力カット 物理速度 240Mbps PLCアダプター最大16台接続 ギガビットイーサネットポート数:1 増設用は、 PLC-HD240ER |
パナソニック ![]() |
|
HD-PLC方式 据え置き型 ノイズフィルター付電源コード 従来製品よりも小型化、省電力化 電源が自動で切れる「自動節電機能」を搭載 物理速度 210Mbps 実効速度 65Mbps(TCP)、90Mbps(UDP) イーサネットポート数:1 設定ボタンを同時に押して初期設定 増設用は、 BL-PA510 |
パナソニック ![]() |
|
HD-PLC方式 壁コンセントに直接挿入できるプラグインタイプ スリムタイプ 従来製品よりも小型化、省電力化 電源が自動で切れる「自動節電機能」を搭載 物理速度 210Mbps 実効速度 65Mbps(TCP)、90Mbps(UDP) イーサネットポート数:1 設定ボタンを同時に押して初期設定 増設用は、 BL-PA310 |
パナソニック ![]() |
|
HD-PLC方式 壁コンセントに直接挿入できるプラグインタイプ 増設用4ポート、スリムタイプ 物理速度 210Mbps 実効速度 65Mbps(TCP)、90Mbps(UDP) イーサネットポート数:4 設定ボタンを同時に押して初期設定 |
パナソニック ![]() |
|
HD-PLC方式 壁コンセントに直接挿入できるプラグインタイプ 従来製品よりも小型化、省電力化 電源が自動で切れる「自動節電機能」を搭載 物理速度 210Mbps 実効速度 65Mbps(TCP)、90Mbps(UDP) イーサネットポート数:1 設定ボタンを同時に押して初期設定 |
シャープ ![]() |
|
HomePlug AV方式 物理速度 200Mbps 実効速度 55Mbps(TCP)、85Mbps(UDP) イーサネットポート数が1のアダプタ の2台セット |