ホームネットワーク(家庭内LAN)の構築

パソコン・周辺機器やネットワーク対応のデジタル機器などを接続して家庭内のネットワークシステム『ホームネットワーク (家庭内LAN)』を構築するための手段としては、

  • 機器をLANケーブルで接続して通信する有線LAN
  • 無線電波で通信する無線LAN

があります。(LAN:Local Area Network)
家の物理的構造やどのような機器を接続するかによってLAN方式を選ぶことになりますが、 両者を混在することもできます。
以下では、有線LANと無線LANの特徴について比較を行い、 有線LANと無線LANの構成例や両者を混在した場合の構成例について紹介します。

ホームネットワーク(家庭内LAN)は、元々、

  • 複数のパソコンを接続して、パソコン間でファイルを共有する
  • プリンタを複数のパソコンで使用する
  • 複数のパソコンをインターネットに接続してウェブサービスやメールを利用する

など、パソコンや周辺機器のためのネットワークとして設置されていました。
その後、デジタルテレビやBD・DVD・HDDレコーダーなどのデジタル家電がネットワーク機能を持つようになり、 更に、スマートフォン・タブレット等のモバイル機器やゲーム機、ネットワークオーディオ機器などをホームネットワークに接続することにより、 放送・通信・蓄積メディア等のマルチメディアコンテンツ(動画・静止画・音楽) を機器間で共有して活用できるデジタルホームを構築することができるようになりました。
そして、スマート家電、生活設備やセキュリティ機器等をネットワーク化したスマートホームの進展などにより、 そのベースシステムとしてホームネットワークは重要な役割を持つようになっています。

ホームネットワーク(家庭内LAN)構築の関連ページ

ホームネットワークの高速化、拡張、セキュリティ向上などの方法について
 ⇒「ホームネットワークの改良

ホームネットワークを構成するLAN製品の具体例について
 ⇒「ホームネットワークの構成機器

ホームネットワークの構成実例(Aさんの自宅システム)を詳細に紹介
 ⇒「ホームネットワークの構築例

ホームネットワークへの機器の接続状況、実効通信速度、通信プロトコルなどを調べる方法
 ⇒「ホームネットワークの解析ツール

無線LAN(IEEE802.11n)に関する特集ページ

 ⇒「高速無線LANの使い方

 ⇒「超高速無線LANの使い方

 ⇒「超高速無線LAN「Wi-Fi6・Wi-Fi6E」(11ax)の使い方

なお、ホームネットワーク(家庭内LAN)にマルチメディア機器やデジタル家電機器を接続してマルチメディアコンテンツ を活用するホームネットワークシステム(デジタルホーム)の具体的な作り方や使い方については、 「デジタルホームの作り方」、 「デジタルホームの使い方」のページをご覧ください。






有線LANと無線LANの比較

家庭内LAN

概 要


有線LAN



機器の間をケーブルで接続して、デジタル信号を送ります。 イーサネットというLAN方式が通常使われ、イーサネットケーブル(LANケーブル)を 用いて機器を有線LANルーターHUB(ハブ)などのホームネットワーク機器 に接続して構成します。
ホームネットワークで使われるイーサネットの主な規格は、

  • 10BASE-T(IEEE802.3i)
    :通信速度10Mbps
  • 100BASE-TX(IEEE802.3u)
    :通信速度100Mbps
  • 1000BASE-T(IEEE802.3ab)
    :通信速度1Gbps

などがあります。
有線ルータ、HUBなどの通信機器は、10BASE-Tと100BASE-TXの両者に対応したものと、 更に1000BASE-Tにも対応したものがあります。

長所

  • 通信速度が速い(主流は、速度100Mbpsのイーサネット)
  • 通信距離が長い(~100m)
  • LAN装置が低価格

短所

  • ケーブルの配線が必要

また、LANケーブルの替わりに家庭の電力線(100V配線)を用いて信号を送る 高速PLC(Power Line Communication) が実用化されています。
更に、家庭に配線されているTV放送視聴やCATV用の同軸ケーブルを用いてイーサネット信号を送ることができます。 詳細は、「同軸ケーブルを用いたホームネットワーク」 のページにまとめてありますのでご覧ください。
高速PLCや同軸通信モデムを用いると配線の問題点が解消できます。


無線LAN



機器の間は無線電波を使ってデジタル信号を送ります。
2.4GHz帯の電波を用いるIEEE802.11b、IEEE802.11gという規格と、
5.2GHz帯の電波を用いるIEEE802.11aという規格があります。
また、2.4GHz帯と5GHz帯を使う、より高速なIEEE802.11nという規格があり、 更に高速なIEEE802.11ac、IEEE802.11axも使われるようになっています。
各規格の最高通信速度(理論速度)は、

  • IEEE802.11b :11Mbps
  • IEEE802.11g :54Mbps
  • IEEE802.11a :54Mbps
  • IEEE802.11n :600Mbps
  • IEEE802.11ac :6.9Gbps
  • IEEE802.11ax :9.6Gbps

無線LANでは、各規格に準拠した無線ルータ (又は、アクセスポイント)と、無線LANインターフェース機能 (無線LANアダプタ、無線LAN子機など)を持つ端末機器との間や、 端末どうし間を上記の周波数の電波により通信します。 この時、無線ルータや各機器の接続設定が必要となりますが、簡単に 設定を行うために、各メーカーによって独自の自動設定方式が採用されて いますので、同じ自動設定方式(例:AOSS、らくらく無線など)の無線LAN装置を揃えた方が便利です。
また、無線LAN機器の業界団体であるWi-Fi Alliance によって、無線LAN機器間の接続設定と 暗号化設定を簡単に実行するための「WPS(WiFi Protected Setup)」 という規格が作られており、これを採用したWi-Fi対応機器が増えています。
無線LAN製品(無線ルータ、アクセスポイント、無線LANアダプタ、他)は、 上記の4つの規格全てに対応している機器や、一部にしか対応していない機器がありますので、 どの規格を採用しているかを確認しておくことが大事です。

長所

  • ケーブルを配線する必要が無い
  • 電波が届く範囲内であればどこでも移動でき、ノートPCに便利
  • パソコンは無線LAN機能を内蔵しているものが多い

短所

  • 有線LANに比べて実効速度が遅い
  • 壁やドアなどの影響で電波が十分届かない場合がある
  • 盗聴などセキュリティの不安がある




有線LANの構成例

有線LANの構成例


有線LANの構成手順

(1)

インターネットプロバイダが用意したモデム(FTTH、ADSL、CATV等)に LANケーブル(Cat5、Cat5e、Cat6等)を用いて 有線ルータを接続します。

(2)

有線ルータは、通常、HUB機能を持っており、 機器を接続するLANポート(接続端子)が用意されていますが、ポート数が少ない場合は HUBを追加してポート数を増やす事が できます。
モデムがブロードバンドルータのようにルータ機能を持っている場合は、有線ルータを使用 しないで、モデムのLANポートとHUBを直接LANケーブルで接続することもできます。

(3)

次に、有線ルータあるいはHUBのLANポートと機器の間をLANケーブルで接続します。

(4)

ルータのDHCP機能により、各機器に IPアドレスが自動的に割り振られ、機器間で 通信ができるようになります。なお、IPアドレスの設定は手動で行うこともできます。

(注)

有線ルータはインターネット回線からの不正アクセスを検出・ 防止するファイアウォール機能を持っていますので、 ホームネットワーク(家庭内LAN)のセキュリティを向上することができます。 従って、フォルダやコンテンツファイルの共有設定が行われている機器が接続されている 家庭内LANではセキュリティを確保する上で重要な機器です。

(注)

有線ルータやモデム(あるいは、ブロードバンドルータ)の初期設定はパソコンを用いて 行いますので、最初にパソコンを接続し、各マニュアルを参考にして設定を行います。


LANケーブルによる接続例




無線LANの構成例

無線LANの構成例


無線LANの構成手順

(1)

インターネットプロバイダが用意したモデム(FTTH、ADSL、CATV等)に、 LANケーブルを用いて、 無線ルータ(又は、アクセスポイント)を接続します。
モデムがブロードバンドルータの場合は、ルータ機能を持っているため、無線ルータ をブリッジとして使用すればよいので、本体に付いている切換スイッチ等でブリッジ (アクセスポイント)に切り替えておきます。

(2)

無線ルータと通信する無線LANアダプタ(無線LANインターフェース)を内蔵している機器は、 そのまま無線ルータに電波で接続できます。
無線LANアダプタを持っていないパソコンを無線ルータに接続する場合は、 USBタイプやカードタイプの無線LANアダプタ(無線LAN子機とも呼ばれています) が発売されているので、これを利用します。 無線LANアダプタは、無線ルータと同じ無線LAN規格のものを使用します。 また、無線ルータと同じメーカーの製品を使用した方が初期設定が楽になります。

(3)

有線LANの接続端子しか持っていない機器の場合は、 無線LANイーサネットコンバータに有線LAN で接続し、これを介して無線ルータと通信します。

(4)

無線ルータの初期設定や機器との接続設定は各メーカーによって異なります。 また、無線LAN内の通信のセキュリティ確保のために暗号化通信が行われます。 詳しい設定法は無線ルータのマニュアルを参照してください。
なお、無線LAN機器の接続設定を自動で行う仕組みが増えてきています。例えば、AOSS、 らくらく無線、WPSなどの自動接続方式に対応している機器はボタンを押すだけですぐに設定が 行えるように工夫されています。

(5)

各種設定が終わり、ルータのDHCP機能により各機器に IPアドレスが割り振られると、機器間通信が できるようになります。なお、IPアドレスの設定は手動で行うこともできます。

(注)

無線ルータは有線ルータと同様にファイアウォール機能を持っていますので、 外部のインターネット回線からの不正アクセスを検出・防止することができます。

(注)

NAS(LAN接続HDD)やBD・DVD・HDDレコーダを無線で接続するには、 無線LANイーサネットコンバータを使用することになりますが、アクセスが集中するような場合には、 無線ルータのイーサネットHUBポート(1000M/100M/10M等) にLANケーブルで接続しておいた方が高速化がはかれます。


無線LANで接続できない場合のチェックポイント

(1)

電波の受信状態(電波が届いているか)
⇒機器(子機)を無線ルータの近くに置いて接続を確認する。

(2)

機器(子機)の暗号方式(WPA2/WPA/WEP等)や暗号化キーが間違っていないか
⇒無線ルータの設定に合致しているか確認する。

(3)

無線ルータのセキュリティ機能をチェック
⇒接続する機器を制限する「MACアクセス制限」がオフになっていないか親機の
  設定を確認する。




無線LANと有線LANが混在した場合の構成例

ホームネットワーク(家庭内LAN)は有線LANと無線LANを組み合わせて作ることもできます。 有線LANと無線LANの接続は、 無線LANイーサネットコンバータを用いれば簡単にできます。 また、高速PLCアダプタを用いれば、電力線 (100V配線)を利用してLANを拡張することができます。
家の構造・間取りや、機器の配置状態、高速通信の必要性、 モバイル機器(ノートPCなど)の使い方等々、さまざまな面を考えて最適な構成に することができます。例えば、

  • 高速に通信したい機器は有線LANで接続する
  • 移動して使用する機器は無線LANで接続する
  • 配線が困難で無線電波が弱い場所は高速PLCを用いる

など使い方によって選択することが大事です。
また、LAN-HDD(NAS)はできるだけ高速な通信環境で使用できるように、 有線LANに接続しておいた方がよいです。


無線LANと有線LANの混在


有線LANルータを用いたホームネットワークに無線LANルータを追加して有線LANと無線LANが混在する場合については、
ホームネットワーク(家庭内LAN)の改良」のページの『重要な注意点』を参照してください。




ホームネットワークへの接続確認

ホームネットワークに接続されたパソコン、周辺機器、デジタル家電機器などが、 機器間でマルチメディアアプリケーションを利用できるためには、 機器間通信をおこなうための各種設定がきちんと行われていなければいけません。 機器間通信が正常に行われるための主なチェックポイントを以下に紹介します。

各機器にIPアドレスが正しく割り当てられているか!
各機器がコンテンツファイルを共有できるためには、各機器が同じLANグループに属している必要があります。 ホームネットワークではルータ(あるいは、モデムのルータ機能)が自動的にIPアドレスを割り当てる働き(DHCP機能) を持っていますので、各機器のネットワーク設定で、「IPアドレスを自動で取得する」にしておけば問題ありません。 通常はデフォルトで自動になっていますが、手動でIPアドレスを設定する場合は、IPアドレスの値に注意する必要があります。
IPアドレスの確認方法は、「LAN解析ツール」ページの 「ホームネットワーク(家庭内LAN)の機器接続状況」をご覧ください。また、このページで紹介しているフリーソフト「NetEnum」 を使用すると、ホームネットワークに接続されている機器を一覧表示できます。

パソコンは同じワークグループに属しているか!
ワークグループ名の確認、変更等はシステムのプロパティで表示される画面で行えます。 ホームネットワークを介してファイル共有が行われるように、パソコン等のワークグループ名は同じにしておきます。
ワークグループ内のパソコンやLAN-HDDを画面上に表示する方法は、 使用しているパソコンのOSによって手順が変わってきますが、 一般的には「スタートメニュー」や「マイネットワーク」等から表示できる「ネットワーク」ウィンドウに表示されます。

パソコンのWindowsファイアウォールによりプログラムがブロックされていないか!
Windowsファイアウォールの例外タブを表示すると、ファイアウォール経由で入力方向のネットワーク接続を許可するかどうかを 決める画面が示されますので、 コンテンツサーバソフトとクライアントソフトにチェックが入っていることを確認しておきます。

セキュリティソフトのファイアウォールにより機器間通信がブロックされていないか!
例えばMcAfee SecurityCenterの場合は、プログラム許可機能と信用IPアドレスの設定があります。 プログラム許可機能では、コンテンツサーバ/クライアントソフトのアクセスが許可されているか、 信用IPアドレスでは、パソコンにアクセスできる機器のIPアドレスが「信用IPアドレス」のリストに入れているかを確認しておきます。